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妊婦は鮭を食べても大丈夫?妊娠中に影響する鮭の栄養素と注意点、おすすめレシピ3選
魚の消費量が落ちている近年でも、人気が高くて身近な魚、鮭。
刺身、スモークサーモン、鮭とばにフレーク、焼き鮭、ムニエルなど。
食べ方も様々でおいしいですよね。
旅館の朝食の定番メニューのイメージもあります。
そんな鮭について、
「肌が荒れやすい妊婦さんに特別な美肌効果がある」
「胎児の障害を予防する効果がある」
といった噂があるのをご存知ですか?
この記事では、鮭に多く含まれている栄養素や、「子どものADHDに効く」「美肌効果がある」という誤った噂、おすすめレシピについて次の6項目にまとめました。
・鮭はタンパク質とビタミンの宝庫
・鮭の脂質にはDHAとEPAが豊富!
・鮭を食べればADHDの子どもが生まれない!はウソ
・鮭を食べると特別な美肌効果が得られる!はウソ
・刺身とスモークサーモンに注意して、食中毒とリステリア菌を予防
・おすすめ鮭レシピ「野菜たっぷり味噌焼き」「鮭シチュー」「鮭のチーズ焼き」
ついつい信じたくなるような噂もありますが、ひとつずつ情報をチェックしていきましょう。
鮭はタンパク質・ミネラル・ビタミンの宝庫
鮭に含まれている最も多い栄養素はタンパク質です。
タンパク質は、細胞や血液、血管、ホルモン、酵素、皮膚など、体のあらゆる物の原料になる重要な栄養素。
妊娠中は特に多くの量を取る必要があり、妊娠初期なら50gで、妊娠中期は60g、後期になると75gを1日に取るよう厚生労働省が発表しています。
鮭100g中のタンパク質は30g。簡単に1日に取りたいタンパク質の半分くらいが取れるのは魅力的ですよね。
他にも、カリウム・マグネシウム・リンといったミネラル類もたくさん含まれていますし、ビタミン類もA、D、E、B1、B2、B6、B12、葉酸など、多くの種類がバランス良く豊富に含まれています。
妊婦さんが悩むむくみ、足がつる症状、睡眠不足からくる疲労、免疫力の低下、胃腸の機能低下、イライラ、ストレスが原因の精神的な不調などの改善に、ミネラルやビタミンは欠かせません。
特に葉酸は厚生労働省からも注意喚起されているほど大切なビタミン。
このように、鮭はタンパク質、ミネラル、ビタミンを効率良く手軽に摂取できる妊婦さんにおすすめの食材です。
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鮭の脂質にはDHAとEPAが豊富!
もうひとつ、注目したい鮭の栄養素は脂質(魚の脂)です。
鮭に多く含まれている脂質は不飽和脂肪酸。
脂は脂でも積極的に取りたい脂でDHAやEPAを豊富に含んでいます。
DHAやEPAが健康に与える嬉しい影響について、厚生労働省のHPには次のような説明がありました。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)
魚類、特にいわし、まぐろなど海産魚の脂質に多く含まれる脂肪酸の一種です。血栓を防ぐとともに血中のLDL(悪玉)コレステロール値を低下させ、脳梗塞、心筋梗塞などの血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあります。さらに、DHAは、脳神経系に高濃度で分布し、情報の伝達をスムーズにするほか、脳の発育や視力の向上に関与しています。
妊婦さんは妊娠前よりも体内の水分量が大幅に増えており、胎盤に大量の血液を送っています。
良質な血液が必要不可欠な妊婦さんにとって、EPAはとてもありがたいもの!
さらに、新しい命を育んでいる妊婦さんは、脳や視神経に良い影響を与えるDHAを積極的に取りたいですよね。
鮭にはこうした嬉しい栄養素が多く含まれていますので、妊娠中こそ食べたいものです。
鮭を食べればADHDの子どもが生まれない!はウソ
今、インターネット上では「妊娠中に鮭を食べるとADHDの子どもが生まれるリスクが低くなる」といった噂があります。
どうしてこうした噂が流れているのか調べてみました。
ADHDは発達障害のひとつで、日本でもよく知られた障害
まず、ADHDというのは発達障害のひとつです。
発達障害というのは、脳の機能の一部が生まれつき通常とは違う働き方をすることで引き起こされる障害のこと。
脳の機能自体を治すことができないので治療はできません。
障害によって日常生活で感じる困難をカバーするスキルを身に付けたり、支援を受けたりする必要があります。
ADHDには、注意力がなかったり、落ち着きがなかったり、衝動的な言動を自分でコントロールできないといった特徴があります。
(参考:【書籍】発達障害の子どもたちをサポートする本)
授業に集中できなかったり、忘れ物が非常に多かったり、カッとなりやすくて感情コントロールができない。
そんな特徴があって日常生活に支障が出ているような場合は、ADHDの可能性があります。
鮭がADHDに効果があるという科学的根拠となる実証データはない
「鮭を食べるとADHDの子どもが生まれるリスクが低くなる」という噂がありますが、これはウソ。
噂の元になった海外の論文がありましたが、そこに書かれていたのは
・ADHDでない子の母親は魚を食べていた。
・週に二度、魚を食べていた妊婦の子どもはADHDのリスクが60%低い
・ADHDの子の母親の髪には、そうでない子の母親の8倍の水銀が含まれていた。
・大型の魚(マグロやカジキ)は水銀のリスクがあるので避けるべき。
・サーモンやハドック(タラの一種)は水銀のリスクが低い。
こうした内容でした。
(参考:Pregnant women who consume fish twice a week reduce their child’s risk of ADHD by around 60 per cent)
魚のどういう成分が、どういう理由でADHDのなにに効果を発揮するのか。
妊娠中のどの時期に、どれだけ食べると、どういう理由でリスクが減るのか。
それがなぜなのか。
こうした一番重要なことが書かれていなくて、単純に「リスクが低くなる」と結論づけられていました。
明確な根拠が示されていない漠然とした内容を誤って解釈したのが「鮭を食べればADHDの子どもが生まれるリスクが下がる」という噂。
子どもがADHDになる理由は未だ不明。
脳のどの部分・どういう機能に、どんな障害があってADHDの症状が出るのかはっきりしていません。
鮭を食べることは全く問題ありませんが、鮭で障害を消そうというのは間違いです。
鮭に水銀リスクが低いのは本当
噂の根拠となる論文に魚の水銀リスクが記載されていましたが、日本では厚生労働省がもっと多くの魚に関する詳細な水銀のデータを掲載しています。
それによれば、鮭は水銀リスクが低く、食べる頻度や量を心配する必要はありません。
また、噂の根拠となった論文で「避けた方が良い」と指摘されていたマグロについても、キハダ、ビンナガ、メジマグロ、ツナ缶は問題なく食べることができる、と発表しています。
(参考:妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項|厚生労働省)
さらに、栄養素の面で言えば、マイワシ、サバ、ブリといった魚の方が鮭よりも2~3倍の量のDHAやEPAを含んでいます。
(参考:サラサラ生活向上委員会|ニッスイ)
「女性が妊娠中に魚をよく食べると、魚に含まれているなにかが胎児の成長を助けるかもしれない。それによってADHDのような行動を取る子どもが生まれるリスクが減る可能性がある。ただし、詳しい効果や効能、機構・機能は不明。なお、食べる魚は水銀を摂取してしまうリスクが低い魚を選ぶようにしよう」
噂の根拠となった論文については、このように解釈した方が適切と言えます。
論文は2012年のものでした。
残念ながら2018年になった今でもADHDの詳細なメカニズムや原因は解明されておらず、治療法も有効な薬もありません。
明確な根拠がないまま、発達障害などナイーブでシビアな問題が解決されるような解釈をするのは不適切です。
鮭を食べれば特別な美肌効果がある!はウソ
もうひとつ「プロテオグリカンという特別な栄養が含まれているので、鮭を食べると高い美肌効果が得られる!」という噂があります。
残念ながら、これもウソ。
鮭の身を食べたからといってプロテオグリカンという特別な物が取れて、プルプルの美肌になる訳ではありません。
どうして「鮭を食べるとプロテオグリカンが取れる」という噂が流れたのか。
調べてみると、ある化粧品や健康食品の原料を作っている会社の研究成果に辿り着きました。
その会社のHPには
水産加工品の製造工程においてサケ頭部が廃棄されることも多く、資源の有効利用が求められていました。そこで、弘前大学と株式会社角弘との共同研究により、サケ鼻軟骨から高純度かつ大量にプロテオグリカンを精製する技術が確立されました。
一丸ファルコスはこのサケ軟骨由来プロテオグリカンを化粧品原料、健康食品原料へと開発しました。(引用元:プロテオグリカン|一丸ファルコス株式会社)
こうした記載がありました。
おそらく、こうしたことから「鮭にプロテオグリカンが豊富で、妊婦さんが鮭を食べると美肌効果が得られる」という噂が生まれたと考えられます。
プロテオグリカンは動物の皮や軟骨に豊富に含まれているタンパク質の一種。
他のタンパク質よりも保湿性などに優れていて、化粧品の原料などとして高い価値があるものと言われています。
このタンパク質を鮭の鼻軟骨から抽出するのに成功しただけであり、「鮭が特別なタンパク質を大量に含む美肌効果抜群の魚だから身を食べよう!」ではないので注意してくださいね。
刺身とスモークサーモンに注意して食中毒とリステリア菌予防を
タンパク質やミネラル、ビタミンが豊富な鮭ですが、注意したいことがふたつあります。
それは刺身が原因のアニサキスによる食中毒と、スモークサーモンが原因のリステリア菌です。
アニサキスによる食中毒
アニサキスは体調が20~35mmの糸のような姿をした寄生虫です。
サケ、カツオ、イカ、アジ、サバ、サンマといった魚の内臓に寄生しています。
これらの魚を刺身にすると、アニサキスが身に寄生している可能性が!
アニサキスを食べてしまうと、アニサキスが胃や腸の壁に食い込みます。
食べてから数時間~10時間後、激しい腹痛や吐き気、嘔吐といった症状が出ます。
アニサキスを駆除する薬はなく、内視鏡検査を受けて胃壁に食い込んだアニサキスを見つけ、取り除くしか治す方法はありません。
鮭の刺身を食べるときは、食べる前に十分見てチェックしてから口にするようにしましょう。
スモークサーモン由来のリステリア菌
あなたはリステリア菌をご存知でしょうか?
妊婦さんが感染すると流産や死産、胎児に悪影響が及ぶといったリスクが高い菌で、欧米などでは感染が報告されています。
厚生労働省のHPを見ると
我が国のこれまでの食中毒統計では、リステリアによる食中毒の報告例はありませんが、食品安全委員会の評価書によると、リステリア感染症の推定患者数は年間200人(平成23年)とされています。
リステリアに感染して重症化することはまれですが、妊婦、高齢者の方は注意が必要です。食品由来によるリステリア症は、年間住民100万人あたり0.1~10人とまれです。ただし、重症化すると致死率が高い疾患であることから、世界保健機関(WHO)においても注意喚起を行っています。
(引用元:リステリアによる食中毒|厚生労働省)
リステリア菌による食中毒の症状は軽いケースが多く、社会に大きな影響を与える事件になることがありません。
病院に行かない人も多いですし、病院に行っても症状が軽いと「どういう菌による食中毒なのか」というところまで調べません。
こうした理由で日本では患者が確認されておらず、推定患者数が200人とされています。
ただ、妊婦さんの場合は、リステリア菌が胎盤を通過して胎児が感染する可能性が!
流産したり、胎児に障害が残るリスクがあります。
欧米では、ナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモンなどが感染源になっています。
ですから、念のために妊娠中は積極的にスモークサーモンを食べるのは避けましょう。
ちなみに店頭で「トラウトサーモン」というものを見かけたことがあると思いますが、トラウトサーモンは”鮭”ではなく”ニジマス”です。
見た目がそっくりなので勘違いしてしまいますよね。
スモークトラウトサーモンというのもありますが、こちらも鮭同様に控えて置いた方が無難でしょう。
おすすめ鮭レシピ3選
栄養価が高い鮭を使った、簡単に作れる妊婦さんにおすすめのレシピを3つ紹介します。
野菜たっぷり味噌焼き
冷蔵庫の中の野菜を一気に消費できる、野菜たっぷりの美味しく嬉しいメニューです。
野菜をたくさん取って、不足しがちなミネラル類やビタミン類をしっかりとりましょう。
【材料】
好きな野菜を好きなだけ(食べやすいようカット)
鮭 3切れ
★味噌 100g
★砂糖 大さじ2
★みりん 大さじ2
★しょう油 大さじ1
【作り方】
(1)生鮭の両面に塩を降り、20分静置。
(2)(1)の両面にフライパンで焼いて焼き色を付ける。
(3)(2)に野菜を入れ、合わせた★を回しかける。
(4)フタをして5分ほど焼く。
(5)野菜がしんなりしたら、鮭をほぐしながらよく混ぜ、器に盛る。
鮭シチュー
鶏肉の代わりに鮭を使ったクリームシチューも美味しいですよ。
【材料】
鮭(切り身) 3切
タマネギ 1/2個
ニンジン 1/2本
しめじ 1パック
シチュー用ルー 1パック
牛乳 100g
【作り方】
(1)鮭は1切れを3等分し、小麦粉を軽くまぶしてフライパンで両面をこんがりと焼く。
(2)鍋でタマネギ・ニンジン・しめじをサラダ油で炒める。
(3)(2)に水700ccを加え、15分煮込む。
(4)火を止めて(3)にルーを入れる。しっかりルーが溶けてから(1)の鮭を入れる。
(5)(4)を弱火で5分煮込み、牛乳を加えてからさらに5分煮込む。
(6)お好みのとろみ具合にまで煮込み、完成。
鮭のチーズ焼き
【材料】
鮭(切り身) 2切れ
まいたけ 50g
しめじ 50g
タマネギ 1/2個
バター 10g
溶けるチーズ 適量
しょう油 大さじ1
【作り方】
(1)まいたけ、しめじ、タマネギは食べやすいサイズにカットする。
(2)フライパンでバターを熱し、鮭の両面を焼き色が付くまで焼いて取り出す。
(3)(2)の残りのバターで(1)をしんなりするまで炒める。
(4)(3)にしょう油を回し入れて混ぜてから平らに広げ、鮭を乗せる。
(5)一番上に溶けるチーズを乗せ、フタをする。チーズが溶けたら火を止めて完成。
まとめ
鮭はタンパク質・ミネラル・ビタミンが豊富な魚です。
さらにDHAやEPAも多く含まれていて、血液の状態を良くし、脳や目の神経の維持に役立ってくれています。
妊娠中に多く取りたい鮭ですが、ADHDや美肌に高い効果がある、という誤った情報が出ています。
妊娠中は少しでもいいものを!と敏感になりがちですが、鮭は鮭。
薬ではありません。
過剰な期待をしないようにしましょう。
より多くの栄養素を取るために沢山の野菜を食べる鮭レシピや、体を温めるシチュー、チーズ焼きなど。
いろんな方法で鮭を食べて、栄養補給をしましょうね。