不妊治療に対する理解や認知度が、日本でも少しずつ高まってきていますね。
しかし、不妊治療のステップに踏み出そうが悩んでいるご家族はまだまだたくさんいます。
実際に、国立社会保障人口問題研究所の発表によると、夫婦の約3割が不妊症の心配をしたことがあることが分かっています。
なかなか踏み出せない理由としては、赤ちゃんへのリスクや、自分の体へのリスク、そして、費用の問題や、精神的に苦痛を受けることなど考えられます。
「不妊治療を受けようか悩んでいるけど、どのような内容なの?」
「人工授精の赤ちゃんは障害を持って生まれるって聞いたけど本当?」
「人工授精をする場合のリスクについて知っておきたい。」
不妊治療に対して色々な不安や悩みが、それぞれにあるはずです。
まず一歩踏み出す前に、不妊治療がどのようなものなのか、その中でも今回は人工授精に注目して、リスクや子どもへの影響はないのか詳しくご説明していきます。
・不妊治療と日本
・不妊治療の流れ
・人工授精について
・人工授精が子どもに与える影響
・人工授精の副作用やリスク
・不妊治療の相談先
これから不妊治療の相談を始める人、人工授精へのステップを考えている人、不妊症に悩んでおり誰に相談してよいのか分からない人などの参考になれば嬉しいです。
目次
不妊症や不妊治療に悩む日本
日本は、世界に比べると不妊率が高いのをご存知ですか?
その原因としては、女性の社会進出や晩婚化が挙げられています。
世界でも、晩婚化が進んでいるのですが、スペインやフランスでは不妊治療は保険対象なので、不妊治療に取り組みやすい社会になってきています。
しかし、未だ日本は、人工授精や体外受精においては保険が適用されていません。
すべて自己負担となるため、何度もチャレンジをしている夫婦にとっては、高額になっていき、精神面だけでなく、金銭面でも大きな負担となっています。
日本の出生児の数は、年々減ってきているのに比べて、体外受精により生まれる赤ちゃんの数は急増しています。
厚生労働省によると、2004年に生まれた赤ちゃんの1.64%が体外受精により生まれた赤ちゃんでした。
しかし、2010年には2.7%と大幅に増えています。
現在ではもっと高い割合です。
以前や、女性の身体に問題があるのではと考えられることが多かったのですが、現在は男性側にも何かしらの問題があると指摘されてきています。
不妊症は、女性だけでなく男性も含めて、夫婦で乗り越えていかなければなりません。
―参照:資料3|不妊治療をめぐる現状|厚生労働省よりー
また、現在では、体外受精と顕微授精の特定不妊治療においては、給付金の支援があります。
特定不妊治療の給付については、それぞれの自治体のホームページに記載されており、自治体の事業所で相談できますので、まずは相談だけでもと考えて問い合わせてみてもよいでしょう。
不妊治療の流れや治療の内容
不妊治療の流れについて、簡単にみていきましょう。
まずは、不妊検査を行い、女性不妊であるのか、男性不妊であるのかなど原因を見つけます。
女性不妊の場合は、子宮内膜症や卵管不妊、排卵障害などが原因として考えられるので、それぞれに適した治療や手術を行うことがあります。
どちらも問題なく自然妊娠の可能性がある場合には、まず自然周期でのタイミング法を試します。
タイミング法
基礎体温を測っておき、排卵日に近づいたらクリニックなどで超音波エコーや尿検査により、排卵日を正確に予測することができるので、医師に指定された日に合わせる方法です。
体への負担も少なく、費用も安いのが特徴です。
自然周期でのタイミング法が上手くいかなかった場合には、飲み薬を使っていきます。
排卵誘発剤を使いながら、排卵のタイミングを測っていきます。
確実に排卵するので妊娠しやすくなるのが特徴なのですが、卵胞が2つ以上になることもあり、多胎になる可能性があります。
次に、注射を使うタイミング法があります。
排卵誘発剤などを注射して、排卵を促し、飲み薬より効果が高いとされます。
この3つのタイミング法をクリニックや産婦人科と相談しながら何度か進めていきます。
進め方や方法は、それぞれの医師によって違う場合もあるので、しっかりと相談を行いましょう。
人工授精
タイミング法により、赤ちゃんをなかなか授かれないときは人工授精へのステップに移ります。
人工授精については、のちほど詳しくご説明していきますが、簡単には注射器により、事前に採取した精子を直接子宮内に送り、自然妊娠を期待する方法です。
体外受精
タイミング法、人工授精により、赤ちゃんが授からない場合には、体外受精へのステップに移ります。
体外受精は高度な医療なので、費用が高く、女性の身体への負担が重い治療法です。
治療の内容は、女性側はまず、排卵誘発剤を投与して卵胞を育て、排卵を促します。
その後、精子と卵子を取り出して、体外で自然の力に任せて受精させます。
受精卵ができ4細胞から胚盤胞に育ったら、子宮内に戻して、その後は自然妊娠と同じ流れとなります。
妊娠する確率は、30歳40%、40歳35%、45歳7%となり、そのうち、流産する確率としては30歳約18%、40歳35%、45歳80%となり、年齢によりなかなか妊娠が期待できないことがわかります。
体外受精は、卵管が閉鎖している女性、精子の数がとても少ない男性、高齢の場合などが対象とされており、状況によっては、体外受精からの不妊治療を始める場合もあります。
顕微授精
体外受精を行い、体外での受精ができない場合におこなわれます。
卵子と精子を取り出して、顕微鏡下において、人の手により受精させます。
受精卵ができたら、子宮内に戻すという方法です。
最近では、体外受精の成功率が上がってきているため、顕微授精と差がほとんどなくなり、あまり行われなくなってきていますが、特質に合わせて医師の判断元行われています。
このように、不妊治療にはステップがあり、一つ目を試して、可能性がなければ次のステップと、順に進んで、妊娠への可能性を高めていきます。
人工授精って何?その方法や費用など
人工授精とは何なのか
人工授精はAIHとも呼ばれており、精子を子宮内へ注射により直接注入し、卵子と精子が出会う確率を高めるという方法です。
医師が行うのは精子を注入するところまでなので、その後の妊娠に至るまでの流れは、自然妊娠と全く同じになります。
パーコール法(良い精子を選別して送る方法)とスイムアップ法(運動率のよい精子を送る方法)の2つの方法によって行われています。
人工授精と聞くと、人工によるものと考えがちですが、ほとんど自然妊娠に近い形です。
人工授精は精子が進入するのをサポートする目的なので、精子が問題ない場合は、あまり有効ではなく、また女性の年齢が高い場合にも効果が低いことが分かっています。
成功する確率は、1回につき5~10%ほどで、女性の年齢が上がると確立が下がっていきます。
費用は保険適用外のため、すべて実費となり1回が2万円ほどで行われています。
病院によって、金額に差があることがあるので、問い合わせやホームページで確認してくださいね。
人工授精を4~6回ほど試し、妊娠できないときに、体外受精にステップアップすることを視野に入れます。
人工授精の流れ
人工授精は当日だけで施術されるので、入院などの必要はありません。
人工授精後に、排卵と黄体機能の確認を行い、黄体機能が低い場合は黄体ホルモンの補充を行います。
黄体機能とは、黄体ホルモンにより子宮内膜を妊娠に適した状態にしておくことで、黄体機能が低いと着床が上手くいかない場合や不正出血などが起こる可能性があります。
人工授精が終わり、次の生理が始まる予定日の頃に、また病院に訪れ、妊娠の判定を行います。
人工授精は痛みがあるのか
気になる点は、痛みもありますね。
痛みの強さには個人差がありますし、痛みに強い人もいるので、断定することができません。
しかし、子宮に精子を送る際にカテーテルを使用するのでその圧迫感や痛みを感じることがあります。
また、生理痛のような痛みを感じる人もいるようです。
人工授精は自然に妊娠に比べると障害のある子が生まれやすいの?
人工授精による子どもへの影響を心配するご家族は大変多いそうです。
少しだけ人の手が入るだけですが、やはり完全なる自然ではない為、悪影響がないか心配ですよね。
基本的には、自然妊娠と人工授精での子どもへの影響やリスクには差がありません。
自然妊娠でも、赤ちゃんの先天性異常などが発生します。
その発生率と人工授精での赤ちゃんへの異常の発生率は同じなので、人工授精だから障害のある子どもが生まれたということはありません。
障害児が生まれやすいと心配する人も多いかと思いますが、人工授精においてその心配は不必要です。
人工授精を行う場合の副作用やリスクについて
赤ちゃんへの影響については、自然妊娠と同じと考えて良いのですが、今度はお母さんへの母体への副作用やリスクについてお話します。
人工授精は、排卵をコントロールするために排卵誘発剤を使用します。
排卵誘発剤を使うと、まれに卵巣が腫れる卵巣過剰刺激症候群になる可能性があります。
症状としては、お腹が張る・吐き気がする・急に体重が増える・尿量が減ることから始まり、重症になると腎不全や血栓症などの合併症を引き起こすことがあるのです。
卵巣が大きく膨れ、お腹や胸に水がたまります。
薬を中止することで、病気が改善されることが多いので、投薬後に違和感やこの症状が出たときには、早めに医師に相談するようにしましょう。
人工授精の回数を重ねるほど、発症するリスクが高くなるので、注意が必要です。
それだけでなく、何度も失敗することにより、家族の精神面にも負担がかかります。
夫婦でしっかりと話し合いながら、進めていきましょう。
不妊治療の相談はどこにすればいいの?
不妊治療を受ける場合には、産婦人科やクリニックで相談することができます。
インターネットや電話で、不妊治療の内容を先に聞いておくと、相談しやすいでしょう。
しかし、不妊治療を受けるかどうかを迷っており、直接病院に連絡するのを悩んでいる人もたくさんいます。
全国には、たくさんの相談機関があります。
例えば、東京では「不妊・不育ホットライン」があり、気軽に電話で相談できます。
他にも、各県に相談センターやメールで相談できる期間もあり、厚生労働省が紹介しています。
まずはメールで気軽に相談したいという人におすすめです。
―参考:不妊専門相談センター事業の概要|政策について|厚生労働省公式HPよりー
まとめ
不妊治療にはいくつのもステップがあり、個々にあった治療を進めていきます。
保険が適用されないものもあり、何度も治療をすることがあるので、金銭面での負担はあります。
子どもへの悪影響が心配されていますが、自然妊娠と同じという考えで大丈夫ですよ。
夫婦で悩んでいるのであれば、まず病院や相談センターに相談だけでもしてみると、モヤモヤしている心が、少し軽くなるかもしれません。