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「宜」という漢字について
字画数:八画
音読み:ぎ
訓読み:――
「宜」の意味や由来や成り立ちと特徴
「宜」は、「建物」と「板の上にのったお供え物」の、2つの絵から生まれた漢字です。
お供え物のことを考えると、建物は家というより「廟」のようなものだと思われます。
廟の中によいお供え物が置かれている様子を表すことから、「ちょうどよい」という意味になりました。
「ちょうどよい」は積極的な肯定の意味ですが、日本語で「宜」を用いられる時には、「ほどほどによい」という少し抑え目な感じの肯定になります。
常用漢字表内に訓読みはありませんが、常用漢字表記外には「よ(い)」「よろ(しい)」が記されています。
「とてもよいわけではないが、ほどほどによい」というのが日本語での意味になります。
やわらかな表現の肯定ですね。
江戸時代の後期までは、子供達は藩校か町の私塾に通っていましたが、それらで行われるテストでは評価が3つに分かれていました。
「可」「宜しい」「すこぶる宜しい」です。
「可」は、よくはないけれどまあいいでしょうというニュアンス。
「宜しい」は、ほどほどによい。
「すこぶる宜しい」は、すごくよい。
当時は筆書きでしたから、先生が朱筆で丸をつけて、上記のいずれかを書いて評価をしてくれていたのです。
「すこぶる宜しい」がもらえると、お家ではお赤飯を炊いてお祝いしてくれるところもあったとか。
想像すると、ほのぼのとした光景が目に浮かびますね。
過去の日本では、現代の子供達からは想像もできないほど勉強ができていました。
およそ5歳で漢字のほぼすべてが書けていたのです。
漢文の時代でしたから必要に迫られてのことでしたが、算術も、現在の小学生の年齢で因数分解が解けていたほどです。
もちろん塾や藩校に通えるほどの身分の高い子供達でしたが、江戸時代後期の頃の日本人はとても知識欲が旺盛で、藩校に通いながらもあちらに評判の塾があると聞けば、すぐさま教えを乞いに行ったほどでした。
その一例が長州藩の吉田松陰の「松下村塾」でした。
そこは身分に関係なく通えたので、足軽の息子に過ぎなかった伊藤博文も通っていました。
成績はそこそこ。
いつも「宜しい」だったそうです。
それでもかなりのサービス評価だったようですが、伊藤博文の交渉能力には目を見張るものがあるとして、勉強で自信をなくさないように気を遣っていたようです。
そのおかげで日本初の総理大臣にまでなれたのかもしれませんね。
「宜」を使った熟語
便宜
意味:あるものにとって好都合で便利なもの。
また、特別にとりはからってやること。
適宜
意味:その状況に合っていること。
適切にとりはからうこと。
辞宜
意味:丁寧に頭を下げて挨拶をすること。
または遠慮して辞退すること。
情宜
意味:対人関係における人情、誠意。
権宜
意味:その時、その場に合った処置。
臨機応変。
事宜
意味:物事の状態が適当であること。
空辞宜
意味:口先だけの遠慮。
便宜的
意味:ものごとの間に合わせにとりあえずしのぐこと。
便宜主義
意味:根本的なことを考えないで、その場で適当に処理をする主義の人。
「宜」の説明の仕方
電話や役所の受付などで名前を伝える際、どういう漢字を書くのか聞かれる時があります。
その場合、どのように説明すればよいのか悩みますよね。
ここではその例を紹介したいと思います。
例えば、あなたの名前が宜美(よしみ)だとします。
・「よしみのよしは、便宜を図るの宜です」
・「よしみのよしは、漢字の宜しくの宜です」
これは少し説明が難しいかもしれません。
日本人としては後者の方がわかりやすいようですが。
もし理解してもらえなければ「うかんむりの下に目を書いて、目の一番下の線を長くした字です」と説明した方がよいかもしれませんね。
「宜」を使った名前の有名人・芸能人
長島 弘宜さん(俳優)
立河 宜子さん(エステサロン経営者)
伊藤 宜堂さん(江戸時代後期の儒者)
加納 久宜さん(明治から大正期の政治家)
高田 宜和さん(明治期の農政学者)
清水 宜輝さん(明治から昭和期の実業家)
樋口 宜康さん(江戸時代中期から後期の公卿)
平井 宜雄さん(昭和から平成期の法学者)
鈴木 宜山さん(江戸時代後期の儒者)
佐々木 俊宜さん(スタントマン、スーツアクター、俳優)
「宜」を使った名付け候補
宜(よしみ)
未宜(みのり)
亜宜(あき)
宜美(よしみ)
珠宜(たまき)
陽宜(ひより)
紗宜胡(さきこ)
塔宜子(ときこ)
宜佳(よしか)
宜子(のりこ)
実宜(みのぶ)
詩宜(しのぶ)
宜伊子(きいこ)
乎宜莉(こより)
香宜子(かよこ)
宜笑(のぶえ)
宜香(やすか)
莉宜乃(まきの)
智宜里(ちより)
弥宜衣(やよい)
宜穂(やすほ)
祈宜(いのり)
宜芽(のぶめ)
千宜子(ちよこ)
燈宜(ひなり)
まとめ
「宜」は、「ほどほどによい」の意味を持った漢字です。
ゆったりとした穏やかさを感じさせますね。
字は可愛くもあり「よい」にふさわしく真面目なイメージも併せ持ちます。
読みが多いので、どのような漢字とも合わせやすいのが魅力です。
意識してよくなろうとしなくても周りから「よいひと」と自然に思われる。
そんなふうに心に余裕のある素直でおおらかな女性に成長するように。