目次
「舟」という漢字について
字画数:六画
音読み:しゅう
訓読み:ふね、ふな
「舟」の意味や由来や成り立ちと特徴
「舟」は、「木でできた乗り物」の絵から生まれた漢字です。
真横に引かれた一本線は櫂を示し、荷や人を乗せて川を行き来する「舟」を表しています。
「舟」は、その単純なつくりから‘ちいさなふね’を。
同じ意味の漢字に「船」がありますが、こちらは‘おおきなふね’を表しています。
「船」は、がまず川と乗り物を表す「ハと口」ができ、乗り物が何かを表すために「舟」を部首につけました。
そして、河口までの水流に添って海へ出た様子から「船」になり、そのことから、「船」は海を航海できるほどの「大きな舟」を表すようになったのです。
中国では「大きな舟」のことも「舟」と書くので、「船=おおきなふね」と称するのは日本独特の言い回しであり、意味合いなのかもしれません。
「舟」と「船」の訓読みが同じであるのに、使われ方は異なります。
「船」は汽船や連絡船などの大型船を指し、「舟」は川などに浮かぶ小舟を指しています。
用途によって使い分けているのですね。
「船」は帆が発達し、やがては蒸気で動く舟ができたことから海へ出ることが容易となり、その時代背景から生まれた漢字だとされています。
しかし、どちらも基本は同じ「水に浮かぶ‘ふね’」であり、その意味に違いはないのです。
しかしながら、「舟」は時代とともに少なくなってゆきました。
今では「小舟」「丸木舟」「渡し舟」などの古風なイメージに沿ったもののみにしか使われていません。
また、「ふな」の読みも同様に、「舟歌」「舟遊び」などのように懐かしさを残すのみなのです。
時代の流れとはいえ、寂しい感じがしますね。
けれども、「舟」から「船」に移り変わっても、「舟」のイメージを失うことはありませんでした。
お風呂を指す「湯船」、刺身などを盛り付ける「船盛」、空気を吹き込み膨らませて空中に浮かべる「風船」などなど。
風流さと可愛らしさを感じさせますね。
何より「舟」は部首となり、様々な漢字にその名残を残しているのです。
「舟」を使った熟語
稲舟
意味:刈り取ったばかりの稲を運ぶ舟。
漁舟
意味:魚をとるための小舟。
姿舟
意味:美しい女性を乗せた舟。
舟屋
意味:舟に乗ったまま入れる宿。
一階に舟を停め、二階が部屋になっている。
丸木舟
意味:大きな木をくりぬいて作った舟。
捨小舟
意味:乗る人がおらず川岸に打ち捨てられた小舟。
灯籠舟
意味:盆の終わりに灯篭を乗せて川や海に流す、麦や麻で作った供養のための小舟。
呉越同舟
意味:仲が悪い者同士が同じ場所にいることのたとえ。
一月三舟
意味:ひとつの月も見る方向によっては違うように見えることのたとえ。
仏語。
引舟女郎
意味:遊郭で太夫に付き添って客席の世話をする女郎のこと。
「舟」の説明の仕方
電話や役所の受付などで名前を伝える際、どういう漢字を書くのか聞かれる時があります。
その場合、どのように説明すればよいのか悩みますよね。
ここではその例を紹介したいと思います。
例えば、あなたの名前が舟子(ふねこ)だとします。
・「ふねこのふねは、渡し舟の舟です」
・「ふねこのふねは、小舟の舟です」
「舟」は「船」がメジャーであることから、口頭で説明するのは難しいかもしれません。
そんな時は、「右横にハチとクチのない‘ふね’です」と言った方がわかってもらえるかもしれません。
もしくは「山岡鉄舟」さんの名前を引用してみるのもよいかも。
「舟」を使った名前の有名人・芸能人
花柳 幻舟さん(舞踊家、作家)
英 一舟さん(江戸時代中期の画家)
林 東舟さん(江戸時代前期の儒者)
山岡 鉄舟さん(幕末から明治期の政治家、思想家)
速水 御舟さん(明治から昭和期の日本画家)
友野 霞舟さん(江戸時代後期の漢詩人)
加藤 英舟さん(明治から昭和期の日本画家)
桑田 笹舟さん(大正から昭和期の書道家)
石原 舟月さん(明治から昭和期の俳人)
大原 呑舟さん(江戸時代後期の画家)
田沢 稲舟さん(明治期の小説家)
小田 慈舟さん(明治から昭和期の僧侶)
寺地 舟里さん(江戸時代後期から明治期の医師、洋学者)
「舟」を使った名付け候補
舟李子(せいこ)
舟依羅(せいら)
霞舟(かしゅう)
美舟(みふね)
舟華(のりか)
舟羽(しゅうは)
未舟(みのり)
湖舟(こふね)
舟胡(しゅうこ)
舟与里(せより)
麻舟里(ませり)
真舟(まふね)
智舟(ちふね)
陽舟(ひのり)
莉舟(りせん)
舟乃(せの)
舟佳(しゅうか)
花舟(かせん)
舟音(せのん)
舟深(のりみ)
舟羽子(しゅうこ)
胡舟(このり)
舟江(のりえ)
燈舟(ひのり)
舟夏(しゅうか)
まとめ
「舟」は、「水に浮かぶ舟」という意味の漢字です。
大きな舟を表す「船」よりは、古風で雅やかなおもむきがあります。
夜の海で月光を浴びながら、ゆうらりと漂う小舟は、まさに雅やかな「水に浮かぶ舟」。
とても美しいシルエットですね。
和歌の中によく登場する「舟」は、人々の喜怒哀楽を映す心の鏡そのものなのかもしれません。
そして、それはきっと舟が船に形を変えても変わることはないのでしょう。
「舟」は古風であるがゆえに名前に用いれば奥ゆかしさを感じさせます。
また、声に出せば愛らしく可憐な響き。
しっとりと落ち着いて洗練された女性になるよう願いを込めて。