「子どもが産まれてから夫婦仲が悪くなった」
「悪化した夫婦関係を良くしたいけど、どうすればいいの?」
産後クライシスとは、子供が産まれてから夫婦の関係が悪くなることで、最悪の場合は離婚という結末を迎えてしまいます。
そんな産後クライシスは誰にでも起こる可能性があり、原因や対策を知っておくことが重要です。
今回は産後クライシスを乗り越えるために原因と解決方法、そして予防法まで紹介したいと思います。
ぜひ今記事を読んで、幸せな家庭作りを行ってください。
目次
産後クライシスとは?
産後クライシスとは、2012年にNHKが提唱した産後に訪れる危機のことです。
出産後に夫婦関係が急激に悪化することを意味します。
一見すると、産後は愛するわが子が産まれて家庭内が幸せに包まれるイメージがあると思います。
しかし、実際にはライフスタイルと身体の大きな変化等から、夫婦関係が悪くなることが多々あるのです。
産後クライシスという単語ができたのは2012年ですが、産後に夫婦関係が冷え切る現象は昔からよく見られてきた現象、言い換えれば誰にでも起こり得る現象なのです。
産後クライシスについての面白い調査を2つ紹介しましょう。
平成23年に厚生労働省が全国母子調査を行いました。
その中で、母子世帯になったときの子供の年齢という項目があります。
簡単に言えば、離婚したときの子供の年齢です。
その結果が以下の通り。
・0~2歳:35.1%
・3~5歳:20.9%
・6~8歳:11.5%
・9~11歳:9.1%
・12~14歳:4.5%
・15~17歳:2.4%
・不詳:16.6%
最も離婚をした人が多い時期は、子供が0~2歳のとき、つまり産後2年以内ということです。
子供が産まれると、必ずしも夫婦の絆が深まるというわけではありません。
むしろ、絆が壊れてしまうことがあるのです。
ベネッセ教育総合研究所が行った「第1回妊娠出産基本調査・フォローアップ調査(1歳時期)報告書」では、産後の夫婦関係の変化を調査しています。
以下が調査内容とその結果の一部です。
・私(妻)と配偶者は幸せな結婚生活を送っていると思う
妊娠期:79.8%
0歳時期妻:60.9%
1歳時期妻:54.0%
・配偶者といると本当に愛していると実感する
妊娠期:74.8%
0歳時期妻:44.7%
1歳時期妻:35.7%
出産前には「幸せな結婚生活を送っている」と回答する人が80%近く、「パートナーを愛していると実感する人」が75%近くいるのに対し、産後はその数が減少する一方です。
さらに、出産後の夫婦の愛情変化では、妊娠期の妻74.3%が夫を愛していると実感すると回答したのに対し、2歳時期にはたったの34.0%だけが夫を愛していると回答。
夫の場合は、妊娠期に74.3%だったのが51.7%まで減少しました。
これらの調査結果を見てみると、産後クライシスの大きな特徴の一つに、妻から夫への愛情が大きく薄れることにあります。
だからと言って、産後クライシスの原因は夫だけにあると断言してはいけません。
妻に対する愛情が薄れている夫も数多くいます。
大切なのは、産後クライシスの原因と対策をしっかりと理解すること。
そして、パートナーに対する愛情が減らないように互いに努力を続けることなのです。
産後うつと産後クライシスは別物!
産後うつと産後クライシスはよく混同されてしまいますが、基本的には別物です。
ここまで見てきてわかるように、産後クライシスは夫婦の仲が悪くなること。
つまり、夫婦に訪れる危機が産後クライシス。
対して、産後うつは女性だけに見られる症状です。
うつ病と同じ症状が出ることから「産後うつ」と呼ばれ、10~20%の産後女性が経験します。
産後うつの原因は、出産直後に起きるホルモンバランスの急激な変化と環境の変化と言われています。
特に睡眠不足や疲労、そして孤独感が合わさる出産後1か月の間に発症することが多いです。
あなたも産後クライシスかも?産後クライシスの代表的な症状
この記事を読んでいるあなたは、「もしかしたら私も産後クライシスなのかも?」と疑問に思っているはずです。
産後クライシスの症状はある程度共通しています。
以下が主な産後クライシスの症状です。
該当するものが多いほど、産後クライシスの可能性があります。
- 理由もなくパートナーにイライラする
- 子供が産まれてから夫婦の会話が減った
- 子供が産まれてからセックスレスになった
- 相手を異性として見れなくなった
- 父親としての自覚が足りないと思う
- 他の父親 / 母親とパートナーを比べてしまう
- 2人きりの時間が苦痛
- パートナーが育児に参加していないと思う
- 夫に触りたくない
- ヒステリックになったように思う
- 出産後もしくは妊娠時期に夫が浮気をした
産後クライシスを放っておくと、35%の人々のように離婚という最悪の結末を迎えてしまいます。
産後クライシスは解決することが可能。
そのためにもまずは、産後クライシスを問題として受け止めることが大切なのです。
産後クライシスの原因6つ
「産後クライシスの原因はこれだ!」と断定するのは非常に難しいです。
様々な要因が複雑に組み合わさった結果、産後クライシスが起きます。
ここからは、産後クライシスを引き起こす原因を解説します。
産後クライシスの実感がある方は原因を知るだけでも精神的負担が軽減されるでしょう。
妊娠中の方は予防の意味でも、ぜひ読み進めてください。
ホルモンバランスの変化
約10か月の妊娠期間中、女性の体内では「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモン量の分泌が増えます。
しかし、出産直後には2種類の女性ホルモン量が急激に少なくなるのです。
代わりに、母乳を作り出すホルモン分泌量が増加します。
このホルモンバランスの乱れのせいで、産後の女性は薄毛、うつ症状、不眠、そしてむくみ等の症状に悩まされます。
そして、産後クライシスも例外ではありません。
ホルモンバランスが乱れることによって、精神や感情を落ち着かせるセロトニン分泌量が減少します。
つまり、些細なことでイライラしたり、涙もろくなったりするのです。
ホルモンバランスの変化はどうしようもありません。
パパが育児や家事に積極的に参加してくれても、情緒不安定なる、もしくは突然怒りがこみあげてきたりします。
産後にはホルモンバランスの変化で不安定になってしまうことを、パパに理解してもらいましょう。
ライフスタイルの急激な変化
赤ちゃんが生まれた瞬間からライフスタイルが激変します。
特に、産後1~2か月は緊張や慣れない育児でママは大変な時間を過ごすことになるでしょう。
体内時計が築かれていないため一晩中赤ちゃんのお守、初めて赤ちゃんを世話するという緊張感、授乳時の乳首の痛みや肩こり、家事炊事などで休む暇がありません。
24時間働きっぱなしの環境でストレスを受けないというのは不可能です。
パパが家事育児にあまり関わってくれない
「妊娠中と産後の旦那の行動は一生忘れない」とはよく言われます。
本当にその通りで、人生で最も重要で大変な時期だからこそ、ママはパパの協力が必要となるのです。
ママは母乳をあげたり、ずっと赤ちゃんの側にいたりするので、すぐに「母親」になれます。
しかし、男性がすぐに「父親」になれるかどうかというと難しいところです。
残業や接待で帰りが遅くなることもあれば、そもそものライフスタイルが激変しません。
ママは育児と家事炊事の疲れでイライラが溜まり、なかなか育児に参加できないパパに怒ってしまうことで夫婦仲が悪くなることは多々あります。
精神的につらくなる
妊娠中は誰もが「出産は幸せ」と考えます。
もちろんその通りですが、子供を育てるのは大変という一面もあるのです。
良い面ばかりを見ていたために、出産後に訪れる数々の苦難に打ちひしがれ精神的に疲弊していきます。
簡単に言えば、理想と現実のギャップに対応できなくなるのです。
それに加えて、育児に専念することで社会との関係が希薄になったり、友人と疎遠になったりすることも多々あります。
ありとあらゆる変化が短期間で起こることも大きなストレスの原因となります。
パートナーへの期待が高すぎる
パートナーへの期待が高すぎると、良い点よりも悪い点に目が行くことが多いです。
例えば、現在メディアで話題になっているイクメン。
テレビで見るような完璧なイクメンを自身のパートナーにも求める人は多々います。
そうなると子供と遊んでいても、「掃除をしてくれない」、「手伝うどころが邪魔ばかりする」等のマイナス点ばかりに目を向けてしまうのです。
メディアで紹介されるイクメンのようなパパはなかなかいません。
また、SNSで見られる知人のパパ自慢にも要注意です。
SNSへの投稿が全てではありません。
パパが育児や家事に積極的に参加することも大切ですが、同時に過剰な期待をパパにすること、そして他のパパと比較するのは避けるべきです。
コミュニケーション不足
ママの生活は出産をきっかけに激変しますが、パパの生活はそれほど大きく変わりません。
そのため、ママの苦労に気づきにくく、感謝の言葉やねぎらいの気持ちを表現しない方が多いです。
また、ママの話を真剣に聞かない、2人の会話時間が減ることも産後クライシスの原因になります。
産後直後のママは、話し相手がいない環境で孤独に時間を過ごしていることを理解しないといけませんね。
今からすべき産後クライシスの解決策7選
産後クライシスは永遠に続くものではありません。
ママとパパが互いに努力を重ねることで、必ず解決できます。
ここからは、今から実践したい産後クライシスの解決策を紹介しましょう。
家事炊事は完璧にしない
産後クライシスや産後うつになりやすい人の特徴に、真面目や完璧主義が挙げられます。
慣れない子守をしながら、掃除に料理、洗濯まで毎日完璧にやるのは難しいです。
しかし、よく考えてみてください。
毎日、完璧に家事をこなす必要はありますか?
毎日丁寧にしなければいけない家事はほとんどありません。
その日に行う必要ある家事だけをやり、残りは自分の時間に充てるといいでしょう。
真面目な人は「家のことよりも自分の時間を持つのは悪いことなのでは?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、自分の時間を持つことで、あなたはリフレッシュできます。
結果的に家事育児にも再び力が入り、夫婦仲も良くなるので決して悪いことではありません。
セックスする
子育てが始まると、毎日の疲れやホルモンバランスの影響で、以前のように夜の営みをする回数は減っていきます。
また、産後にはパートナーを異性として見れなくなる方も少なくはありません。
しかし、セックスは夫婦間の最高のコミュニケーションの一つ。
どうしてもする気になれない場合は、あらかじめセックスする日を決めておくといいかもしれません。
昔デートしていたように、その日に向けて互いに身だしなみを整えたり、ムードを作ったりすることで再び相手に恋する可能性が高まります。
初めは回数こそ少ないかもしれませんが、徐々に回数も多くなっていくでしょう。
ただし、産後の回復には個人差がありますので、痛みや体調不良を感じた場合には無理に行わないようにしましょう。
カップルタイムを作る
子供が産まれてからは、何をするときも子どもと一緒で、意識をしなければ以前のように2人きりの時間を取ることはなくなります。
赤ちゃんが寝静まったころに、2人で映画を観る等をするのはいかがでしょうか?
また、赤ちゃんのことについて話すのも良いコミュニケーションです。
日中一緒にいられないパパに赤ちゃんとの出来事を教えてあげたり、これから必要となるものを話す、もしくは教育方針について話し合ったりしてみてください。
産後クライシスを解決するためには、質の高いコミュニケーションをとることです。
パパに協力してもらう
産後クライシスを解決するためには、絶対にパパの協力が必要です。
まずパパは、家事育児に「参加している」という気持ちを捨てましょう。
「参加」だと主体性がありません。
夫婦が協力する、子供を2人で育てるのは当たり前のことです。
そのことを強く自覚する必要があります。
パパが積極的に育児家事に取り組んでくれたら、ママは悪い点ではなく良い点に目を向けましょう。
そして、褒めてあげたり、感謝の言葉を与えたりするのが重要です。
完璧にできていないからと、小言や文句を言ってはケンカになり、産後クライシスが悪化します。
そもそも日中パパは仕事をしているので、家事育児に不慣れだと理解しておかなければいけません。
2人でよく話し合って、休日の2~3時間はパパに赤ちゃんのお守を任せきってみるのもいいかもしれません。
その間、ママは自分の時間を楽しむことができれば、パパが接待や趣味に没頭しても許せるようになります。
「育児は2人でするもの」、この考えを互いに理解していれば、どちらかだけが自由時間を失うということはなくなります。
周囲の助けをえる
もっと育児に取り掛かりたいけど、仕事でなかなかできないパパも多いはずです。
パパがなかなか家事育児に取り組めないときは、周囲の助けを求めましょう。
誰かに一緒にいてもらうだけでも育児の孤独感から解放され、そしてゆっくりと自分の時間を保てますよ。
まず考えられる協力者は、祖父母です。
祖父母は可愛い孫とたくさんの時間を過ごしたくてたまらないはずです。
祖父母は子育ての先輩であり、大きな理解者となるでしょう。
近くに住んでいるならば、時々子守を頼んでみるといいですね。
注意点は、あまりにも頼り過ぎるのも良くないということです。
あなた・パートナーは毎日義父母がやってきて快適でしょうか?
孫が生まれたことで、祖父母は頼まなくとも頻繁に訪れてくるかもしれません。
結果的に、あなたが気を休めることができないのならば、パパに相談してみましょう。
祖父母が近くに住んでいない場合は、自治体が運営するファミリーサポート等を活用するのもいい手です。
また子守を任せるのは無理でも、時々友人に自宅に来てもらうだけでも大きなストレス解消となります。
パパには言えなくとも友人には言えることもあるはずです。
一人であらゆる悩みを抱え込むのはやめましょう。
具体的な言葉を発する
産後クライシスになっている女性の多くが思っているのが、「旦那の気が利かない」。
言わなくてもオムツを替えたり、ゴミ捨てをしたりして欲しいという気持ちはわかります。
しかし、仕事が忙しく普段から家事育児ができないパパには、具体的な言葉で頼まないと何をすればいいのか分かりません。
パパが動いてくれないからと、イライラして自分で何もかもやるのは良くないです。
パパにお願いして、できることを徐々に増やしてもらいましょう。
頼まれれば、きちんとしてくれるはずです。
感謝の言葉で労う
ベネッセ教育総合研究所が行った「第1回妊娠出産基本調査・フォローアップ調査(1歳時期)報告書」によると、妊娠前は「家事育児に対して労いや感謝の言葉をよくかけてくれる」と答えた人の割合が64.3%だったのに対し、産後は48.1%にまで下がります。
夫婦がお互いに感謝の言葉をかけるのは重要です。
パパが仕事をするのは当たり前、ママが家事育児をするのは当たり前、とは思わずに日常的に労いましょう。
産後クライシスは予防できる
産後クライシスは肉体的にも、精神的にも辛いので可能ならば回避したいところです。
産後クライシスは複雑なので、必ず成功する予防法と言うのはありません。
基本的には、先ほど紹介した対策法を妊娠前から行うようにするのが一番です。
付き合い始めた当初のようにパートナーの見た目を褒める、家事に積極的に参加する、そして感謝の言葉をかける。
これらを習慣化すれば、産後クライシスを回避できる可能性が高まります。
そして、たった1つだけ加えてきたい予防法があります。
今からは、それを解説したいと思います。
貯金はしっかりとしておく
妊娠中の方、そして将来子供を持ちたい方は、今のうちから貯金をしておきましょう。
お金はあなたが思っているよりも大切です。
「お金で幸せは買えない」とは言われますが、お金で良い生活や自由時間を買うことはできます。
例えば、外国で普及している食洗器や自動掃除機を購入できると、家事の負担が減りますよね。
また、家計を圧迫することで夫婦仲が悪くなることも多々あります。
子供が産まれると、毎月大きな費用がかかるのです。
内閣府「インターネットによる子育て費用に関する調査」によりますと、1人当たりの年間子育て費用は0歳時で約93万円、1歳時で約88万円、2歳時で約94万円もかかります。
子供が産まれた後、十分な収入や貯金がないと焦りや不安が生じ、夫婦ケンカへと発展してしまいます。
お金を持ちすぎて困ることはありません。
産後クライシス予防のためにも、今から計画的に貯金を始めましょう。
まとめ~産後クライシスを乗り越えて夫婦の絆を高める~
産後クライシスは必ずしも悪いものではありません。
35%の人々が離婚という結末を迎えていますが、65%の人々は乗り越えられています。
産後クライシスを乗り越えると夫婦の絆は今まで以上に強くなります。
ある意味で、子どもを授かった夫婦が迎える最初の試練のようなものです。
努力とコミュニケーションを重ねることで、必ず乗り越えられます。
産後クライシスはパートナーと確固たる絆を築けるチャンス。
あまりにもネガティブにならず、ポジティブに捉えましょう。
そして、2人で仲良く子育てを行ってください。