妊娠中に高熱が出ると、体力をどんどん消費してしまう上に、食事もとれなくて辛いですよね。
こんな時、少しでも熱が下がればグッと楽になります。
でも解熱剤を使うと胎児に悪影響が出そうで怖い!
そんな不安を抱く妊婦さんも多いでしょう。
この記事では、妊娠中の解熱剤使用に関する5つの注意点を次のようにまとめました。
・自己判断で解熱剤を使用するのはNG!
・解熱剤が胎児に与える影響は未知数
・薬が胎児に与える悪影響の実例
・解熱剤のメリット&デメリット
・妊娠中に薬を使うのは控えるべき
妊婦さんは我慢を強いられるようで複雑な気分になってしまいますが、解熱剤について詳細をみていきましょう。
目次
自己判断で解熱剤を使用するのはNG!
まず、妊娠中はどんな薬であっても自己判断で利用するのはNGです。
・以前、病院で処方してもらった薬
・同じ症状の人からもらった薬
・市販薬
いずれの場合も妊娠中に自己判断で使用してはいけません。
「ネットで大丈夫と書かれていた」「友達が大丈夫だった」という理由で薬を使おう!と考える方もいるかもしれません。
しかし、薬を処方していいのは医師だけ!
友人・知人に薬をもらうのは勿論NGですし、薬剤師にも薬を処方する権限はありません。
薬剤師はあくまで医師の処方箋に従って処方薬を出すだけです。
さらに、市販薬は注意事項を読み、それを守って自己判断で使うもの。
使った結果、どのようなことになっても、インターネットも友達も責任は負ってくれません。
薬を飲むとその成分が吸収され、血液に混ざります。
そして、成分のいくつかは胎盤を通過して胎児の体にも入ります。
これは、どんな薬にも言えます。
自己判断で解熱剤を使用するのは絶対に止めましょうね。
解熱剤が胎児に与える影響は未知数
医師でも妊婦さんに薬を処方することをためらうのは、胎児に与える影響が未知数だからです。
薬は国の認可を受けて販売される前に「治験」という段階があります。
これは、開発中の薬を実際に人が服用してどのような作用・影響・副作用が出るのか確認するもの。
治験に協力する人がいて薬が完成する訳ですが、妊婦さんは治験に参加しません。
つまり販売されている薬は、妊婦さんと胎児に与える影響や安全性が確認されていないということ。
動物実験の結果や薬の成分と特性から、「妊娠中の人が使用すると副作用が出る可能性あり」と推測したり、病気の治療で使用した際の結果などから「こういうことがあった」という事実を把握することしかできません。
実際に薬を使用した時の結果も「薬のせいなのか、病気のせいなのか」「誰にでも起こりうることではないのか」といった疑問点も多く、なかなか「薬の作用です」と結果を断言することができないのです。
このように、妊婦さんや胎児に対する薬の影響は推測がほとんど。
確実なデータが少なく、安全とも危険とも言えないのが現状です。
薬が妊婦さんや胎児に与える悪影響は未知数なのです。
薬が胎児に与える悪影響の可能性と例
「解熱剤が胎児に悪影響を与える!」と言っても、具体的にどんな影響が出るのか想像できませんよね。
実際に薬を使って確認された事例や、医師による推測を紹介します。
妊娠初期は奇形が心配されている
妊娠初期は薬の悪影響による胎児の奇形が心配されています。
妊娠4~11週目くらいの時期は、脳や脊髄、心臓、手足・口・生殖器など、重要な体の器官が作られる時期です。
この時期になんらかの悪影響を受けると、臓器が正常に作られない可能性があり、奇形の心配があります。
ただし、この妊娠初期の奇形は薬以外が原因で起こることも!
そもそも「どうして奇形が起こったのか」が分からないケースもあります。
薬だけが悪い訳ではありませんし、薬を飲んだから奇形になる訳でもありませんが「妊娠していると知らずに薬を飲んでしまった!」という場合は、慌てず、医師にどんな可能性があるのか相談するといいですよ。
(参考:妊娠と薬情報センター:妊娠と薬情報センターについて)
妊娠中・後期は体の機能異常
妊娠中期になると胎盤が完成します。
そうなると、妊婦さんが薬を飲んでも胎盤を通過できる成分しか胎児には届きません。
また、胎児もほぼ全ての器官が完成しているので薬の影響で奇形になるリスクは低いとされています。
しかし妊娠中・後期でも、薬の成分が胎盤を通過して胎児に到達し、内臓や血管の機能を阻害してしまうリスクが報告されています。
実際には、胎児の腎臓機能が低下して尿が出なくなってしまったり、肺が正常に成長しなかったり、エナメル質形成不全で歯が正常に作られなかったりする例が見られます。
体が完成した後も、胎児は薬の影響を受けやすいことが分かっています。
胎児に悪影響を及ぼしやすい薬の例
日本産科婦人科学会によれば、妊婦さんが飲むことで胎児に悪影響が出ると分かっている薬は次のようなものです。
・大腸菌や赤痢菌に効く薬(カナマイシンなど)
・高血圧の薬(カプトプリルなど)
・重度の乾癬の薬(チガソン)
・リウマチや腰痛、筋肉痛の薬(ボルタレン、インダシンなど)
・てんかん、躁うつ病の薬(テグレトール、セレニカR、アレビアチンなど)
・癌や白血病の薬(エンドキサンP錠など)
・子宮内膜症や乳腺症の薬(ボンゾールなど)
・脳血栓症や静脈血栓症の薬(ワーファリンなど)
(参考:妊娠と薬物|日本産科婦人科学会)
これらの薬は、胎児に奇形や神経障害、先天性聴力障害、内臓奇形、新生児壊死性腸炎、口蓋裂、子宮収縮による早産や流産といった悪影響を及ぼすことが分かっています。
こうした薬を利用しないといけない場合は、医師による十分な説明と妊婦さんの同意を受けた上で利用することとされています。
他にも「薬の影響である」という証拠が示されていないものの、悪影響が出る可能性がある薬があります。その中に解熱剤(アセトアミノフェン製剤)が含まれています。
アセトアミノフェン製剤でよく知られているのが、カロナールやアンヒバなどの名前の解熱剤。
カロナールの使用上の注意を見てみると、次のような注意書きが書かれています。
妊婦,産婦,授乳婦等への投与
(1) 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。
(2) 妊娠後期の婦人への投与により胎児に動脈管収縮を起こすことがある。
(3) 妊娠後期のラットに投与した実験で,弱い胎仔の動脈管収縮が報告されている
動脈管収縮が起こると、胎児の心臓が肥大したり、胎児浮腫(全身性の浮腫)になる危険があります。
医師の間でも「解熱剤の中では最も安全性が高い」と言われていたアセトアミノフェンですが、今は妊婦さんの場合、必要最低限の利用に留めることになっています。
今まで「大丈夫」と言われていたような薬でもNGになっていることがあります。
自己判断で使用せず、必ず医師に確認して判断を仰ぎながら適切に使うようにしましょうね。
解熱剤のメリット&デメリット
解熱剤の良い点、悪い点をどこにあるのでしょうか。
解熱剤のデメリットは「病気を治してくれないこと」
解熱剤は頓服薬といって、強い症状が出た時に症状を一時的に抑えるための薬です。
飲んでも一時的に熱が少し下がる程度で、場合によっては熱がほとんど下がらないこともあります。
病気の原因を直接治すわけではないので、数時間経つと再び高熱が出てしまいます。
解熱剤の使用は、数時間の解熱のメリットとリスクを天秤にかけることになります。
解熱剤のメリットは「体が楽になること」
解熱剤のメリットは、一時的に体が楽になることです。
熱が下がると体が楽になり、水分や食事をとったり、眠ったりして体力回復が期待できます。
高熱のせいで全く水も食べ物も取れないような状態に陥った場合は、脱水症状や低血糖に陥る危険があります。その際、解熱剤が効果を発揮するでしょう。
通常なら38.5~39.0℃で解熱剤を使います(水分や食事が取れる場合は使いません)。
ただし妊婦さんの場合は、解熱剤を使う方がいいのか、様子をみる方がいいのか、高熱が出ている病気に対する治療薬を使う方がいいのか、
必ず、医師の診断を受けて判断してもらいましょう。
妊娠中に薬を使うのは、薬の効果がリスクを大きく上回る時だけ
高熱が出ると体が辛くなるので、解熱剤を使いたくなります。
中でもカロナールは、解熱剤の中でも安全性が高いと言われていたので、「使おう!」と考える妊婦さんもいるでしょう。
しかし、今では、カロナールも妊婦さんの場合は胎児に悪影響が出る可能性があるので、使うことで得られるメリットがリスクを上回る場合以外は使わないことになっています。
特に妊娠後期の使用には注意が必要です。
薬が妊婦さんや胎児に与える影響は正直な所、分かっていないのが現状です。
たかが解熱剤と思わず、薬については医師の診断を受けて判断してもらった上で使うようにしてください。