多くの人の命を救うことになる献血ですが、献血できない人の中に妊婦さんが入っているのをご存知でしょうか?
「妊娠は病気ではないのにどうして?」と疑問に思う方もいますよね。
この記事では、妊娠中の方が献血できない理由や、妊娠中の4つの献血リスクを次のようにまとめました。
・健康でも妊婦さんは献血できない
・妊婦さんが献血できない理由は「体調不良」「血圧」
・4つのリスクは「貧血」「胎児の成長」「副作用」「バックアップ態勢」
献血は人を救う行為で、少しでも手助けをしたいという気持ちはとても尊いことです。
しかし妊娠中の献血にはリスクがつきもの。
なぜダメなのかをしっかり知って、妊娠中の体についての理解も深めていきましょう。
目次
健康でも妊婦さんは献血できない。
献血は、病気や怪我で輸血が必要な人の命を救う行為です。
日本赤十字社は、16~69歳の健康な方に献血協力を呼びかけています。
健康な人の場合、全身の血液の12%を献血で抜き取っても問題なし。
また、献血に行くと献血した人自身にも次のようなメリットがあります。
・用意されている飲み物や食べ物を自由に食べられる
・献血ルームによってはカラーセラピーやハンドトリートメントなどのサービスが受けられる
・キッズスペースがあったり、漫画やDVDが準備されていたりする
嬉しいメリットがある献血ですが、残念ながら妊婦さんは対象外。
献血できないのです。
妊娠中の方や出産・流産後6カ月を経過していない方、また、出産後6カ月を経過していても、母乳授乳中で出産後1年経過していない方については献血をご遠慮いただいています。
(引用元:献血をご遠慮いただく場合:日本赤十字社)
妊娠中だけでなく、産後も当分の間は献血ができないんですね。
他にも、次のような人は献血できません。
・出血を伴う歯の治療をした人
・発熱や服薬中など、体調不良の人
・予防接種を受けて一定期間経っていない人
・6カ月以内にピアスを開けたり、入れ墨を入れたりした人
・動物や人に噛まれた人
・海外から帰国して4週間以内の人
・輸血歴や臓器移植歴がある人
・心臓病など特定の病気にかかったことがある人
こうしてみると、かなり条件が厳しいですね。
「血液が足りないと言っているのにおかしい!」という指摘もありますが、献血した人が体調を崩しては元も子もありませんし、万が一、ウイルスや細菌が混じった血を取ってしまうと、病気を広めてしまう危険が!
献血を断るには、それなりの理由があるのを理解したいですね。
ちなみに妊活中の人が献血をしても基本的には問題ありません。
しかし、不妊治療で血液採取を頻繁に行っている人や薬を服用している場合は献血できない可能性があります。
献血をするときは事前に医師に相談して、了承を得てからにしましょう。
妊婦さんが献血できない2つの理由「体調不良」「血圧」
献血を断られる人の条件をみると、「体調を崩す可能性がある人」か「何かの病気に感染している可能性がある人」であることがわかります。
しかし、妊婦さんはどうでしょう?
妊娠は病気ではありません。
健康な妊婦さんなら大丈夫なのでは?と思えますよね。
しかし、妊婦さんは次の2つの理由で献血できないのです。
1.体調不良になりやすい
妊婦さんが献血できない1つ目の理由は体調不良になりやすいから。
妊娠してから、ずっと絶好調!という妊婦さんはいないと思います。いたとしても少数派でしょう。
妊娠するとホルモンバランスが大きく変わり、体は妊娠前とは全然違う状態になります。
つわりで吐き気や不快感が抜けなかったり、貧血やめまいの症状が出たり、昨日までなんともなかったのに急に倦怠感に襲われたり。
また、妊娠中は睡眠不足になりやすく、疲れも溜まりやすいため体調不良に陥りやすくなったり…。
妊娠中は思いがけない体調不良に陥ってしまうことがよくあるのです。
今大丈夫でも、この後も大丈夫だという保証がない。それが妊婦さんです。
血液を抜くと、血液の状態が正常に戻るまで数日~3週間かかります。
どんな体調になるのか分からない妊婦さんに、元に戻るまで数日~数週間かかるリスクを負わせることはできません。
2.血圧が基準に満たない
献血できる人の条件には、収縮期の血圧が90mmHg以上というものがあります。
(参考:日本赤十字社 東京都赤十字血液センター)
妊娠すると血圧が下がることがあり、妊婦さんの中には血圧の条件をクリアできない人がいます。
筆者も妊娠中は血圧がとても低く、収縮期の血圧が81mmHgや87mmHgということがありました。
しかも妊娠28週は97mmHg、妊娠30週には81mmHgというように、血圧が低いだけでなく、安定していませんでした。
血圧が低いこと自体は病気ではありませんが、貧血やめまい、全身倦怠感などのリスクがあります。
血圧の面からも、妊婦さんは献血には不向きなのです。
妊婦さんが献血する4つのリスク
妊婦さんが献血できない理由を紹介しましたが、妊婦さんにとって献血はリスクが大きいというのも事実。
主に次の4つのリスクがあります。
1.貧血に陥りやすい
妊娠中、貧血に悩まされる妊婦さんは多いですよね。
めまい、立ちくらみ、動悸、息切れなどの症状が出る他、極度の貧血になると胎児に十分な量の酸素や栄養を送れなくなってしまいます。
妊娠中の貧血は鉄分不足が原因のケースが多く、しかも食事で補うことができないほど不足していて、サプリメントや鉄剤などで補わなければならないことも。
自分だけでなく胎児の成長にも血液が必要となる妊娠中に、献血で血を抜いてしまっては、貧血のリスクがさらに高くなってしまいます。
2.血液不足で胎児に危険が及ぶ
妊婦さんにとって、血液は胎児を育てるのに欠かせないもの。
栄養素や酸素を胎児に24時間絶え間なく送り続ける血液が足りなくなってしまうと、胎児の成長や命に関わります。
そのような大切なものを抜き取ることはできる限り避けるべきです。
妊娠中は胎児の成長を第一に考えるべきで、献血で血を抜くのは適切とは言えません。
関連記事⇒妊婦は脳貧血を起こしやすい?妊娠中の脳貧血の胎児への影響と4つの予防策
3.献血の副作用がある
献血は健康な人でも採血中や終了後に副作用が出ることがあります。
献血後の副作用発生率は気分不良、吐き気、めまい、失神などが0.9%、失神に伴う転倒が0.008%、皮下出血が約0.2%、神経損傷(しびれ、運動障害など)が約0.01%です
(引用元:日本赤十字社)
副作用が出る確率はとても低いのですが、ゼロではありません。
妊娠中はできる限りリスクを避けたいもの。
絶対に必要な場合以外はリスクを負うべきではありません。
4.バックアップ態勢が整っていない
妊娠中のトラブルは、医療従事者の中でも母体と胎児に関する専門的な知識を持つ医師が対応しなければなりません。
しかし、そのような特別な配慮が必要な人をケアする態勢は献血ルームや献血車に整っていません。
そのような環境で、血液を抜き取ることは妊婦さんにとって非常に大きなリスクとなります。
まとめ ~妊婦さんにとって献血はリスクが高い行為~
献血は非常に重要で社会に貢献する尊い行為ですが、妊婦さんは献血できません。
妊娠中は体調不良になりやすく、睡眠不足だったり、血圧が低くて安定しなかったり、献血に不向きな体になっています。
さらに、妊娠中の献血で、万が一なにかあった時のバックアップ態勢が整っていないというリスクもあります。
なにより血液は胎児を育てるのに必要不可欠なもの!
それを抜き取ってしまうのは適切ではありません。
妊娠中は献血をお休みし、胎児の成長のために血液を残しておくようにしてくださいね。