「奇形児が産まれるリスクを下げたい」
「赤ちゃんのためにも、奇形が生じないように何か対策をしたい」
このような思いをお持ちではありませんか?
妊活・妊娠中の方なら、誰もが心配するであろう奇形児。
残念ながら完璧な奇形予防方法はありませんが、奇形が発症するリスクを下げることは可能です。
今回は奇形児が生まれる原因、治療方法の有無、そして今から気をつけたい奇形発症リスクを下げる4つのことを紹介します。
ぜひ参考にしてください。
目次
奇形児とは~産まれる原因や確率と対策
奇形児とは、先天的に見た目に何らかの異常を持っている赤ちゃんのことを指します。
奇形児の定義は曖昧で、体内に先天性異常があっても、外見に問題がなければ奇形児とは呼ばないことがあります。
しかし、外見に異常をもたらすことから体内にも問題を引き起こす、もしくは体内に異常があることから外見に問題を引き起こすことは多々あるのです。
奇形は赤ちゃんが生まれた直後から見られるものがあれば、すぐには気づかないものもあります。
例えば、内反足や手足の指が5本以上ある状態(多指症)などは、出産直後に発見されます。
外見に異常が現れる奇形はすぐに発見されますが、体内で起こる奇形は発見に特別な検査が必要となる、また年月が経って初めて発見されることもあるのです。
体内で起こる奇形だと、心臓の欠陥や難聴などが挙げられます。
基本的に、外見の奇形は妊娠時のエコー診断もしくは出産直後に判明し、体内の奇形は大きなものでは妊娠時のエコー検査で判明しますが、小さな奇形は出産後しばらくして判明します。
現在は出生前診断で、出産前に赤ちゃんの健康状態や奇形の有無をある程度は確認できますが、完璧に奇形を見つけられるというわけではありません。
奇形児が生まれる原因
奇形児が誕生するはっきりとした原因は判明していません。
しかし、奇形児を産む確率が高い人々はいます。
そういった人々は出生前診断を行うのを推奨します。
これから紹介する4つの原因のいずれかに該当すれば、主治医と相談して出生前診断実施を検討してみてください。
また、紹介する原因に該当するからと言って、必ずしも奇形児が生まれるというわけでもありません。
妊活・妊娠中に過度のストレスを抱えることは良くないので、あくまでも参考程度にしておきましょう。
1.遺伝子
両親のどちらかに奇形が生じていると、その奇形が遺伝で生まれてくる子どもに伝わる可能性があります。
遺伝子が原因の奇形は、突然変異などで遺伝子が損なわれたときに生じます。
よくあるケースが、必要な遺伝子もしくは遺伝子の一部が失われるということ。
遺伝子起因の奇形は、妊娠中に起きることがよくあり、防ぎようはありません。
もし両親のどちらかに染色体異常があったり、以前に染色体異常のあるお子様を出産した経験があったりする方は、出生前診断を受けることも視野に入れましょう。
2.妊娠期間中に摂取した薬
妊娠中もしくは授乳期間中に摂取した薬が奇形の原因となる場合があります。
妊娠中に服用しても大丈夫な薬もありますが、多くの医師は服用前に相談することを推奨しています。
特に妊娠4週目から15週目にかけては、胎児の脳や神経管などが形成される時期なので、薬の服用には慎重になりましょう。
日本医師会は妊娠中の服用を禁忌している薬リストを製作しています。
こちらから見られるので、ぜひ参考にしてください。
原則として、妊娠から授乳期間中に薬を服用しなければいけない場合は、医師への相談を始めに行ってください。
3.生活習慣
妊娠中の生活習慣が奇形の確率を上げます。
妊活中から改善したい生活習慣は、アルコール摂取と喫煙です。
まずは妊娠とアルコールの関係性を見ましょう。
妊娠中にアルコール摂取をすると、胎児性アルコール症候群のリスクが高まります。
これは、日常的にアルコールを多量摂取した母親から生まれた赤ちゃんに見られる症状で、以下の特徴が挙げられます。
・発育の遅れ
・中枢神経障害
・特徴的な容姿
アルコール摂取量が多くなるほど、症候群発症のリスクが高まりますが、少量しか飲んでいなかったのに胎児性アルコール症候群が見られた報告例もあります。
残念ながら、胎児性アルコール症候群の治療法はありません。
しかし、確実に予防はできるので、妊娠期間中だけでもアルコール摂取習慣は改善しましょう。
アルコールと同様に、胎児に悪影響を与える習慣が喫煙。
喫煙数が多いほど、早産と子宮内での胎児の発育が遅れると判明しています。
妊婦が喫煙すると赤ちゃんの出生体重は平均よりも200g軽くなり、ヘビースモーカーだと約450gも軽くなるのです。
さらに早産や低身長、口唇裂(左右の唇がつながっていない状態)、自然流産などの確率が高まります。
妊娠初期に禁煙できた場合は、産まれてくる赤ちゃんへの影響はほとんどないと言われています。
そのため、妊活中から、もしくは妊娠が発覚したらすぐに禁煙に取り組んでください。
4.高齢出産
35歳以上の高齢出産を行うと、奇形児が生まれる確率が高まると考えられてきました。
特に染色体異常が原因で発症する奇形が多いようです。
染色体異常が原因の奇形と言えば、ダウン症が思いつくのではないでしょうか。
ダウン症は発症する確率が高い奇形で、21番目の染色体が3本あることが原因です。
確かに、高齢出産だと染色体異常が原因の奇形が起きる確率は高いですが、染色体異常以外の原因の奇形リスクは低いようです。
2014年に発表されたワシントン大学の研究によると、35歳以上の女性では先天性奇形の子どもが生まれる確率が下がるそうです。
研究者たちは、その理由を35歳以上の女性の子宮では、正常な胎児の方が生き残りやすいからとしています。
高齢出産だからと言って、奇形のリスクを過度に恐れる必要はありません。
むしろ、奇形児が生まれる確率が低いのです。
また、現在は胎児がダウン症かどうかを調べる検査もあります。
100%の精度ではありませんが、高齢出産となる方は主治医から検査を受けるように勧められるかもしれません。
奇形児が生まれる確率を高める要因
ここまでのまとめとして、奇形発症リスクを高める要因をおさらいしましょう。
・家族に奇形を発症した人がいる、遺伝疾患を発症した人がいる
・妊娠中の喫煙やアルコール摂取
・35歳以上の高齢出産
・細菌性感染症
・特定の医薬品の使用
また、糖尿病などの病気に罹患している女性も、奇形のリスクを高めると言われています。
奇形児が生まれる確率は?
奇形児が生まれる確率は年齢によって異なります。
染色体異常が原因の奇形は、高齢になるほど発症しやすいです。
しかし、平均的に見ると奇形児は100人に2人の確率で生まれると言われています。
厚生労働省「女性の年齢と子どもの染色体異常リスク」は、母親の年齢別染色体異常児を出産する確率を公表しています。
確率は以下の通りです。
・30歳:384人に1人
・35歳:192人に1人
・40歳:66人に1人
・45歳:21人に1人
・49歳:8人に1人
ダウン症を始めとする染色体異常が原因の奇形児が生まれる確率は、母親の年齢が高くなるほど格段に上がります。
どの年代でもそうですが、特に高齢出産となる方は生活習慣を徹底して、奇形児が生まれる確率を少しでも下げましょう。
奇形は治療できる?
種類と度合いにもよりますが、奇形は治療できることもあります。
奇形の中には出産前もしくは出産直後に治療されるものもあるのです。
しかし、多くの奇形は生涯にわたって子どもに影響を及ぼすと考えていた方がいいでしょう。
多指症や口唇裂などは重度の低い奇形で、手術で改善もしくは目立たなくさせることも可能です。
少なからず影響を与えますが、生活の質を大幅に下げることはありません。
対して、脳性まひや二分脊椎などは深刻な奇形で、長期的な障害を及ぼし、最悪の場合は死に至ることもあるのです。
治療方法は主治医と相談して決めることになりますが、基本的には以下3種類のいずれかになります。
・薬
お腹の中にいる赤ちゃんに奇形が確認されたとき、奇形を回避するため、もしくは奇形が進行するのを防ぐため母親に処方されます。
・手術
外見に現れた奇形を治すために、手術が勧められることがあります。
口唇裂だと、健康と美容のために、手術で左右の唇をつなげられます。
もちろん、体内の奇形にも手術が行われることもあり、心臓に不備が見つかれば多くの場合で手術が行われるでしょう。
・自宅ケア
厳密に言えば、治療とは異なりますが、奇形児が生まれると両親は担当医から介護の方法を教えられます。
授乳の仕方、入浴の仕方、排せつの仕方などです。
奇形の赤ちゃんは、特別なケアが必要となります。
種類にもよりますが、奇形には治療法があります。
また、どのような奇形をもって生まれてきても、日本にはさまざまなサポート体制が揃っているのです。
万が一、赤ちゃんが奇形をもって生まれてきたら、じっくり医師とこれからの相談をし、利用できる行政のサポートを確認しましょう。
奇形児が生まれるリスクを下げるために心がけたい4つのこと
完璧な奇形の予防方法はありません。
そのため、大切なのは奇形が発症するリスクを高めないこと。
例えば、遺伝や年齢が原因で2%の確率で奇形を発症するとしても、喫煙やアルコール摂取を続けると8%や10%まで高まるのです。
ここからは、奇形児が生まれるリスクを下げるために心がけるべき4つのことを紹介します。
ぜひ参考にしてください。
1.妊活中から絶対に摂取すべき葉酸サプリ
妊活中から、遅くとも妊娠が発覚したらすぐに葉酸サプリの摂取を開始してください。
葉酸とは水溶性ビタミンの一種で、無脳症や二分脊椎などの神経管閉鎖障害発症リスクを下げる働きがあります。
神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもととなる神経管が塞がらなくなること。
そのため、脳や脊髄が正常に機能しなくなり、一生涯の障害が残る、最悪の場合は死産もしくは出産後すぐに死亡してしまいます。
妊娠初期に十分な量の葉酸を摂取すると、神経管閉鎖障害のリスクが劇的に下がると、科学的に証明されています。
通常は1日当たり240㎍の葉酸摂取が推奨されていますが、妊婦の場合は倍の480㎍の摂取が推奨されているのです。
もちろん葉酸は食事からも摂取できますが、食品から葉酸を摂取する場合は莫大な量を食べなければいけません。
そこで厚生労働省や医師は、妊活中もしくは妊娠が発覚したらすぐに葉酸サプリの摂取を開始するように指導しています。
神経管が形成されるのは、妊娠超初期の頃です。
重要な時期ですが、妊娠の兆候が表れないので、妊活時から葉酸サプリを摂取するのが勧められています。
また、多くの葉酸サプリにはビタミンやミネラルも豊富に含まれています。
葉酸サプリは妊活中から出産まで服用し続けるべきです。
2.生活習慣の改善
生活習慣の改善は奇形児が生まれるリスクを下げます。
まず行うべき生活習慣の改善は、禁煙と禁酒です。
お酒は過剰に摂取しなければ問題ないとの意見もありますが、少量の摂取でも奇形のリスクは生まれてしまいます。
完璧に胎児性アルコール症候群のリスクを避けたいのならば、妊娠期間中はアルコール摂取を避けましょう。
禁酒・喫煙と共に、夫婦で取り組むと良いですね。
1人だと辛くとも、2人でなら頑張れるはずです。
もう一つ気をつけてほしいのが、体重管理です。
BMI30%以上の女性は、妊娠中に奇形児を始めとする、何らかの問題を抱える可能性が高くあります。
また、急激に体重を増やすのもいい考えではありません。
急激な体重増加は、妊婦高血圧症候群や妊婦糖尿病を引き起こす可能性が高くあるのです。
3.レチノイン酸ビタミンAを避ける
妊活中の方は、「ビタミンAの過剰摂取は奇形児のリスクを高める」と聞いたことがあるかもしれません。
これは、半分正解で半分不正解。
正確には、レチノイン酸ビタミンAの過剰摂取が奇形児のリスクを高めます。
ビタミンAは、胎児の神経や骨格形成に必要な栄養素です。
特に細胞分裂が盛んに行われる妊娠初期は、ビタミンAを摂る必要がありますが過剰摂取は禁物です。
4.感染症予防をする
意外と見落とされがちですが、妊娠中は感染症にも気をつけなければいけません。
感染症とは、ウイルスや細菌が原因で発症する病気で、代表的なものはインフルエンザです。
実は妊娠中に感染すると、赤ちゃんに大きな影響を与える感染症があります。
そのため、帰宅時の手洗いとうがいはもちろん、子どもや動物の唾液などに触れた場合は丁寧に手を洗いましょう。
妊娠中の方が注意するべき主な感染症は、以下の3つです。
・風疹(ふうしん)
せきやくしゃみなどを通じて空気感染します。
妊娠4~20週で風疹に感染すると、胎児に難聴や視覚障害、心臓疾患などを引き起こす可能性があります。
風疹が流行している時期は、外出を控え、家族に予防接種をしてもらいましょう。
・トキソプラズマ症
トキソプラズマ症は原虫による感染症です。
自然界に住む動物にみられる原虫による感染症で、生肉やガーデニング、猫の汚物で汚染された土に触れることで感染します。
通常感染しても症状が出ない、出ても軽くですみます。
しかし、胎児に感染した場合は別。
胎児感染すると、眼や脳に障害が起きるリスクが高くあるのです。
妊娠中は熱がしっかりと通っていない食品は避け、庭仕事や畑仕事をするときは手袋をつけ手洗を徹底しましょう。
・サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルス感染症は、7割の人が子どもの頃に感染すると言われています。
一度感染経験ある方は問題ないですが、大人になって初めて感染する妊婦さんは要注意。
妊婦さんが初めて感染すると、胎児に悪影響を及ぼし、耳や脳に障害が残るかもしれません。
主に子どもの汚物や唾液にウイルスが多く含まれています。
そのため、妊娠中は子どものオムツ替えを可能な限り避け、オムツ替えをした後は手洗を徹底する、子どもと食器の共有や食べ残しを食べるのを避けましょう。
万が一、感染症の種類に関わらず、症状が出ればすぐに病院へ向かいましょう。
感染症の種類によっては、ウイルスが胎児に感染するのを防ぐために薬を処方してくれます。
まとめ
奇形児は遺伝や年齢などの、どうしようもない要因で生じることがあります。
そのため、重要なのは生活習慣を整える、感染症予防するなどの環境的要因リスクを減らすこと。
特に葉酸サプリは重要な働きをするので、妊活中から摂取するようにしてください。
どんなに対策をしても奇形が生じてしまうことはあります。
その時は、主治医と相談しながら治療を行いつつ、たっぷりの愛情を与えてあげましょう。