「妊娠高血圧症候群」ってご存知ですか?
妊娠中や出産を体験した方でも、まだまだ認知度が低い病気のひとつです。
以前は、「妊娠中毒症」と呼ばれていました。
「妊娠中毒症は知ってる!」という方のほうが多いでしょう。
妊娠中毒症と言っても、太りすぎやむくみ、尿たんぱくが多いなどの症状が含まれているのですが、
そのうちの高血圧に関して「妊娠高血圧症候群」と呼ばれるようになっています。
お母さんの身体や赤ちゃんにリスクがあり怖い病気です。
「なんだか最近よくむくむな~」
「高血圧が続く気がする」
と感じている妊婦さんに、読んでほしい内容です。
・妊娠高血圧症候群の原因
・妊娠高血圧症候群の治療法
・4つの予防策
この3本の柱に基づいて、妊娠高血圧症候群の基礎知識を蓄えていきましょう。
目次
妊娠高血圧症候群ってなんだろう?
日本産科婦人科学会では、
「妊娠高血圧症候群」を「妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの」として定義しています。
-引用 日本妊娠高血圧学会 より-
妊娠高血圧症候群について、日本産科婦人科学会がこのように定義されています。
妊娠中期から、分娩後まで注意が必要な病気です。
その原因は、実はまだはっきりと分かっていません。
最も有力な説は、「妊娠15週までに胎盤の血管が正常とは異なった作られ方をした」という考え方です。
胎盤は子宮の壁にめり込むように張り付き、子宮の血管を破壊してより多くの血流が胎盤に届くように子宮内の血管の仕組みを作り直します。
しかし、妊娠高血圧症候群の人は、この血管の作り直しが上手くできず、胎盤の血流が悪い状態であると考えられています。
胎盤でお母さんから赤ちゃんへ酸素や栄養素が上手く渡せなくなると、赤ちゃんの発育が悪くなってしまいます。
このため、お母さんの身体は無理に赤ちゃんに酸素や栄養を贈ろうとして血圧が上がるというメカニズムなのです。
〇妊娠高血圧症候群になるとどうなるの?
妊娠高血圧症候群になると、お母さんの身体に異変が起こります。
脳にむくみがおきてけいれんを起こす子癇、HELLP症候群、常位胎盤早期剝離になる可能性があります。
合併症が怖い病気の一つでもあるのです。
さらに、赤ちゃんにも影響があります。
赤ちゃんは、栄養が足りなくなり、発育不全、低出生体重児、低酸素症での脳への影響、最悪子宮内胎児死亡になる可能性があります。
〇どうやって発見すればよいのか?
もしかしたら、自分の妊娠高血圧症候群なのかもしれない、と怖くなってきますよね。
どのような症状が出たら、妊娠高血圧症候群なのでしょうか?
この妊娠高血圧症候群ですが、実は自覚症状がほとんどありません。
そのため、妊婦検診で異常が見つかるまで自分では気づかないことが多くあります。
むくみがひどいけど、妊娠中にはむくみやすい体質の人も多いので実際には分からないものです。
参考になる症状としては、持続する強い頭痛、目がなんだか見えにくい、みぞおちあたりが急に痛くなる、尿に蛋白が出てきた(尿が白く濁っている)、血圧が急に上がってきたが挙げられます。
このような症状が出たときには、早めに産婦人科医やかかりつけ医に相談してみましょう。
〇どのような人がかかりやすい?
なりやすい人として、高年齢、肥満、高血圧や腎疾患、糖尿病などの病気がある妊婦、初産婦、多胎妊娠などの報告があり注意が必要です。
高年齢とは、35歳以上で発症率が高くなり40歳を超えるとさらに危険性が増します。
またこれ以外にもうひとつあります。
血縁者に妊娠高血圧症候群や高血圧症の人がいる場合は、リスクが上昇するという結果がでています。
妊娠した際には、血のつながった人に高血圧について聞いてみるとよいでしょう。
さらに遺伝的要因だけでなく、生活習慣も組み合わさっておこります。
というのも、一緒に生活をしている家族を取り囲む環境が同じなので、乱れた生活習慣を繰り返し、家族が高血圧になりやすい環境を作ってしまっているということです。
自分の生活習慣を見直すことも必要ですね。
妊娠高血圧症候群にかかったときの治療方法
高血圧で、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β受容体拮抗薬(ブロッカー)と言われる種類の薬を飲んでいる妊婦さんの場合には、お薬の変更が必要です.
妊娠中に使われる降圧剤としては、メチルドーパやαβブロッカー、Caブロッカーと言われる種類の薬が一般的です。主治医とよく相談されることをお勧めします。
-引用 日本妊娠高血圧学会 より-
日本妊娠高血圧学会にて、お薬について詳しく説明があります。
もともと高血圧のお薬を飲んでいる方でも、妊娠をしたらお薬と変更する必要があるようです。
このように、投薬によって治療する方法があります。
しかし、投薬だけでは間に合わず、重症の場合もあります。
その場合、入院して血圧を下げる薬の点滴注射を行います。
生活習慣の見直しも必要な場合もあり、入院生活にて規則正しい生活に戻していきます。
妊娠後期に入り重傷の場合、状態によっては帝王切開により赤ちゃんを産ませ、お母さんと赤ちゃんの治療を行う方法もあります。
治療方法は確立されていますが、重症化したときは入院となると、とても辛いですね。
妊娠高血圧症候群にかかないために、しっかりと予防を心がけていきましょう。
妊娠高血圧症候群だった場合ですが、産後は症状が良くなる傾向にあります。
しかし、生活の改善は続けて頑張りましょう。
もし乱れた生活を送り続けてしまっては、また子どもたちに辛い思いをさせてしまうかもしれませんね。
さて、では予防方法をみていきましょう。
今からできる予防方法はこれ!
やはり予防には生活習慣の改善が第一です。その中でも主に食事に気を付けましょう。
①塩分やカロリーを抑える
しょっぱいものを食べると喉が渇きます。
それは、身体が塩分を取りすぎると薄めようと水分を必要とするからです。
そうすると、血液量が多くなり心臓へ負担がかかり血圧があがっていきます。
これが高血圧の理由です。
塩分は1日7g以内に抑えるように心がけてほしいのですが、
うどん1玉だけでも約5.5gの塩分が入っているので、意外に難しい事なのです。
しかし、注意することはできるので、味付けを薄くする、素材の旨味をしっかりと出す、減塩しょうゆや減塩味噌を使う、香辛料に変更するなどの方法に変更していきましょう。
また高カロリーのものも高血圧に繋がるので気を付けていきましょう。
②血液サラサラになる食べ物を食べる
赤ちゃんにしっかりと栄養や血液を送るために、血液がサラサラになる食べ物を摂取しましょう。
EPA(エイコサペンタン酸)は青魚に含まれている脂肪酸の一つで、血液をサラサラにしてくれます。
さんまやイワシ、ブリやさんまを進んで食べてくださいね♪
お茶に含まれているカテキンも血圧の上昇も抑えてくれて1石2兆です。
納豆にはナットウキナーゼという成分が含まれており、これも効果的です。
その他、お酢や玉ねぎ、キノコ類も効果があります。
この食材を毎日の食卓に加えてあげましょう!
③カリウムを多く摂取する
塩分を多くとってはいけないと言いましたが、塩分を身体の外に押し出してくれるカリウムも摂りましょう。
カリウムは、アボガド、ひじき、バナナ、リンゴ、ほうれん草、枝豆、じゃがいもに多く含まれています。
このカリウムの働きをさらに活性化してくれる食べ物があります!
それは、あおさ、ひじき、ごま、アーモンド、くるみに含まれているマグネシウムです。
この「カリウム+マグネシウム」を組み合わせて、塩分をため込まない身体を作りましょう。
カリウムは水溶性なので、煮ると外に出てしまいます。ジャガイモなどはゆで汁も一緒に食べられるように、お味噌汁などの汁物にしましょう。
④適度な運動と規則正しい生活
最後は、適度な運動を行うことです。妊娠中は激しい運動はできないので、軽いウォーキングをできるだけ毎日行ってくださいね。
小まめに休憩と水分補給をすることも大切です。
気分転換に、お店やショッピングモールなどを歩くのも良いですね♪
ただし、すでに妊娠高血圧症候群と診断されている人や切迫早産などの人は運動が禁じられていることもあるので、必ず医師の指示に従いましょう。
規則正しい生活も大切ですが、妊娠すると身体の変化も伴い、お昼に眠くなったり、夜に眠れなくなったり、
食べても食べてもお腹が空いたりと、想像以上に難しくなります。
無理に規則を正すことはできなくても、少しでも心がけるようにしてみましょう。
まとめ
妊娠高血圧症候群についてご紹介しました。
まずは、この病気を詳しく知り、高血圧を防ぐためにできることがあることも知ってもらえただけでも
1歩前進したのではないでしょうか?
しっかりと治療方法はあるものの、母子共にリスクがある病気なので、食生活や運動に気を付けてかからないように気を付けていきましょう。