ビタミンが体に必要不可欠なものというのは皆さん、ご存知ですよね。
妊婦さんも例外ではありません。
しかし、妊婦さんには過剰摂取に気を付けるべきビタミンと、不足すると深刻な事態に陥るビタミンがあって不安になってしまいがち!
この記事では、代表的なビタミンの働きや目安摂取量、おすすめの食品や摂取方法の注意点について5つの項目にまとめました。
- ビタミンAは過剰摂取に注意しながら、妊娠後期に摂取量を増やそう
- ビタミンDはカルシウムと一緒に取るのがおすすめ
- ビタミンEは通常の食事で不足・過剰の心配は不要
- ビタミンCは皮膚や血管に欠かせない栄養素!妊娠中は110mgを目指そう
- ビタミンB群(B1、B6、B12)は心と体両方に不可欠!肉や魚、穀物をしっかり食べよう
ビタミンと言っても、働きも特徴も多種多様!
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
目次
ビタミンAは過剰摂取に注意しながら、妊娠後期に摂取量を増やそう
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種。
細胞が分裂・成長する時に欠かせない栄養素で、体内で作り出せないので食品から取らなければなりません。
妊婦さんの場合、摂取したビタミンAの一部が胎盤を通って胎児に送られます。
妊娠後期には、胎児が必要とするビタミンAの量が増えるので、摂取量を増やす必要があります。
不足した時の症状や問題
ビタミンAは、細胞が分裂したり、成長したりする時に必要不可欠な栄養素。
よく知られているのが、網膜細胞での働きですね。
ビタミンAが不足すると、光に対する反応が鈍くなり、暗いところで物が見えにくくなる「夜盲症」のリスクが高まります。
他にも、成長阻害、骨や神経の発達が抑制される、皮膚や粘膜が乾燥して病気に感染しやすくなるといった症状が出ます。
ビタミンA不足は妊婦さん自身だけでなく、胎児の成長にも深く関わる問題なので不足しないように心がけてくださいね。
過剰摂取の症状
不足すると困るビタミンAですが、摂りすぎも問題になります。
ビタミンAは脂肪と相性がいい栄養素なので、取りすぎると体の中に溜まっていきます。
体内に過剰に蓄積されると、頭痛、皮膚が剥がれる、脱毛、筋肉痛といった症状が出てきます。
また、妊婦さんがビタミンAを過剰に摂取すると、胎児に奇形が起こるリスクが高くなります。
特に、妊娠初期は要注意!胎児の器官の多くは妊娠8~11週頃に形成されます。
妊娠を希望している方や、妊娠初期の方はビタミンAの過剰摂取を避けましょう。
(参考|ビタミンAの過剰摂取による影響|内閣府 食品安全委員会)
バランスがとれた食事をとっていれば過剰摂取になることは考えにくいのですが、ビタミンAを多く含む食品だけを大量に食べたり、サプリメントを多用するのはNGですよ。
妊婦さんの1日の摂取量(目安量)
妊娠初期のビタミンA摂取量(目安量)は産前と変わりません。
妊娠後期になると産前よりも80μg多く取るよう、厚生労働省が目安量を発表しています。
<妊婦さんの1日のビタミンA摂取目安量>
妊娠初期・中期
- 18~29歳ー650μg(産前と同じ)
- 30~49歳ー700μg(産前と同じ)
妊娠後期
- 18~29歳ー730μg
- 30~49歳ー780μg
日本人女性の平均的なビタミンA摂取量は1日当たり450μg前後。
目安量に届いていません。
過剰摂取にならないよう注意が必要ですが、産前よりも多く取ることを心がけた方がいいでしょう。
なお、上限は2700μgRE/日です。
これを超えないよう注意してくださいね。
ビタミンAが多い食品
ビタミンAが多い食品として有名なのが、うなぎとレバーです。
- ・うなぎ(かば焼)100g 1500μg
- ・豚レバーペースト10g 430μg
- ・鶏(肝臓・生)10g 1400μg
(参考:食品成分データベース|文部科学省)
うなぎとレバーは突出してビタミンAが多く、食べる量に注意が必要です。
海外では「妊娠中はレバーを食べないように」という注意喚起がなされるほど!
土用の丑の日にはうなぎを食べますし、貧血防止にレバーを食べよう!と思いますよね。
しかし、妊娠初期の場合は量を減らし、過剰摂取に配慮してください。
もっとも、うなぎやレバーを毎日大量に食べる方はほとんどいないでしょう。
ですから過度に心配する必要はありません。
ビタミンAは緑黄色野菜にも多く含まれています。
ただし、緑黄色野菜に含まれるビタミンAは必要な分だけが変換され、残りは体外に排出されますので摂りすぎても問題はありません。
妊婦さんにおすすめなのは、油で炒めた緑黄色野菜を積極的に食べること!
食事の時に副菜を増やして多目に野菜を取るようにしましょう。
ビタミンDはカルシウムと一緒に取るのがおすすめ
ビタミンDは、カルシウムの吸収に深く関係している脂溶性のビタミンです。
日光に当たると体の中で必要な量が合成されますが、美白や紫外線を過剰に気にして日光を避けていると、欠乏する可能性があります。
不足した時の症状や問題
ビタミンDは日光に当たれば合成されるので不足することはないと考えられてきました。
しかし近年は紫外線の問題や美容意識の高まりから、日光に当たることを避ける女性が増えています。
過剰に日光を避け、さらに食事制限によるダイエットで、ビタミンD不足になるケースが出ています。
ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収率が非常に悪くなります。
骨が軟化したり、成長できなかったり、骨粗鬆症のリスクが高まります。
特に妊婦さんの場合、カルシウムは胎児の分も必要です。
ビタミンDが不足してカルシウムの吸収率が下がると、不足分を補うために骨や歯からカルシウムがどんどん溶け出すことに!
若い頃から骨が脆くなってしまうと、閉経後や年齢が高くなってからの骨粗鬆症リスクが一気に高まります。
食べものから取る量と日光に当たって合成する量、両方を確保できる生活を心がけましょう。
過剰摂取の症状
通常の食事でビタミンDが過剰になることはなく、また、ビタミンDが食事で足りている場合は日光に当たって合成される量もコントロールされます。
通常の生活を送っていれば過剰になることは考えにくいのですが、サプリメントを多用したり、極端に偏った食生活を送っているとビタミンDを取りすぎることがあります。
ビタミンDを取りすぎると、腎臓障害、カルシウム過剰、カルシウムが体内に溜まって石灰化(石のようなものができる)といった症状が出ます。
妊婦さんの1日の摂取量(目安量)
ビタミンDの1日の摂取量は7.0μgが目安量です。
産前の女性の摂取量(目安量)が5.5μgなので、妊娠が分かったら多目に取ることを意識しましょう。
上限は100μg。
通常の食生活では、上限を超えることは考えにくいので気にする必要ありませんが、サプリメントなどの栄養補助食品を活用する場合は気を付けてくださいね。
ビタミンDが多い食品
ビタミンDを多く含む食品の代表は、魚やきのこです。
- べにざけ(焼)100gに4μg
- びんながまぐろ100gに0μg
- しらすぼし10gに1μg
- ブリ(焼)100gに4μg
- えりんぎ100gに1μg
(参考:食品成分データベース|文部科学省)
1日の摂取量は7.0μgです。
上記のような食品を食べると、簡単に摂取量をクリアできますね。
魚は神経細胞の維持や血管・血液成分の改善に役立つDHAやEPAも豊富にとれるので、主菜として食べるのがおすすめ。
えりんぎなどきのこ類は主菜に添えたり、味噌汁などの具として活用しましょう。
なお、ビタミンDはカルシウムを吸収する時に必要なものです。
カルシウムも妊婦さんと胎児に必要不可欠な栄養素なので、セットで摂取するのがおすすめ!
ビタミンDを意識した献立に、乳製品などを組み合わせてみてくださいね。
ビタミンEは通常の食事で不足・過剰の心配は不要
ビタミンEに強い抗酸化作用があることはよく知られています。
体内の余分な活性酸素に働きかけ、細胞などが傷付くのを防いでくれています。
また、毛細血管に作用して血行をよくする効果もあるので、冷えや肩こりの解消、肌の健康にも役立ちます。
不足した時の症状や問題
ビタミンEは魚や緑黄色野菜に多く含まれています。
また、加工食品の酸化防止剤として活用されているので、通常の食事で欠乏症に陥ることはまずありません。
ただ、妊娠中はつわりや体調不良、体重管理のために過剰に食事制限するなど、理想的な食生活を送れないことがあります。
そのような状況が長く続くとビタミンEが不足して細胞が傷付き、皮膚の状態が悪くなったり、貧血になることがあります。
また、深刻なビタミンE不足が続くと、肝臓や腎臓の障害、溶血性貧血といった症状が出ることも。
なにごともバランスが大切なので、体重が気になる妊娠中でも極端な食事制限はしないようにしましょう。
過剰摂取の症状
通常の食生活を送っている中では、ビタミンEを取りすぎてしまうことはありません。
ただ、複数のサプリメントや栄養ドリンク、薬などを重複して利用していると過剰摂取になることがあります。
ビタミンEを取りすぎると、けがをした時に血が止まりにくくなったり、出血性の脳卒中のリスクが高くなったり、肝臓の機能に障害がでることがあります。
栄養補助食品は薬ではないので妊娠中でも口にしやすいですよね。
十分な量の食事が取れない時や、食事の量を抑えている時に便利です。
しかし、妊娠中は自分の体と胎児、両方の健康が第一!
利用する栄養補助食品の内容をしっかり把握した上で、過剰摂取にならないよう配慮してください。
妊婦さんの1日の摂取量(目安量)
ビタミンEの1日の摂取目安量は6.5mg。妊娠前よりも0.5mg多く取ることが推奨されています。
なお、上限量は19~29歳の女性は650mg、30~49歳の女性は700mg。
摂取目安量に対して上限量がとても多く「取りすぎることはないんじゃない?」と思ってしまいそうです。
しかし、複数のサプリメントを利用すると簡単に摂取できてしまいます。
今はサプリメントも多種多様。菓子やドリンクの中にも特定の栄養素を添加して増量しているものがあります。
自分がどんなものをどれだけ食べているのか、妊娠中だけでもチェックするようにしてみてくださいね。
ビタミンEが多い食品
ビタミンEは魚や緑黄色野菜、ナッツ類に多く含まれています。
- うなぎ100gに9mg
- アーモンド100gに8mg
- なたね油100gに2mg
- 西洋カボチャ100gに7mg
- ほうれんそう100gに7mg
(参考:食品成分データベース|文部科学省)
1日の摂取目安量は6.5mgです。
効率良く取るには、なたね油で緑黄色野菜を炒めるといいですよ。
火を通すと野菜はかさが減って食べやすくなります。
副菜を意識して多く取るようにするといいですよ。
ビタミンCは皮膚や血管に欠かせない栄養素!妊娠中は110mgを目指そう
ビタミンCは水溶性で、たんぱく質やコラーゲンを作る時に必要不可欠な栄養素。
また、ストレスの軽減や疲労回復にも役立ち、鉄などのミネラル類の吸収率をアップさせます。
体の中に溜めておくことができないので、毎日こまめに摂取する必要があります。
不足した時の症状や問題
ビタミンCが不足すると、たんぱく質やコラーゲンが作れません。
たんぱく質やコラーゲンは皮膚や血管の原料。
ビタミンCが不足すると、肌の状態が悪くなったり、血管がもろくなって出血しやすくなってしまいます。
また、イライラしたり、歯茎から出血したり、筋肉が減ったり、貧血といった症状が出ます。
妊婦さんの場合、血管がもろくなると胎児に十分な酸素や栄養を送れなくなったり、胎盤の機能が低下したり、妊婦さんの血行不良といったリスクも!
長期間、ビタミンCが不足すると心臓疾患や呼吸困難など、母子共に命が危険にさらされる可能性もあるので、注意が必要です。
過剰摂取の症状
ビタミンCは水溶性。
もし、食品から多く取ったとしても尿と一緒に体外へ排泄されます。
このため、通常の食生活を送っていれば過剰摂取の心配はありません。
しかし、栄養補助食品などを利用し、一度に大量のビタミンCを摂取する場合は要注意!
ビタミンCを取りすぎると、胃腸に異常が起こります。吐き気、下痢、腹痛が代表的な症状です。
また、腎臓機能が低下している人が大量に摂取すると腎結石のリスクが高くなりますよ。
妊婦さんの1日の摂取量(目安量)
妊娠が分かったら、ビタミンCを産前よりも10mg多くとることが理想です。
妊婦さんの1日のビタミンC摂取量(目安量)は110mg。上限の規定はありません。
ただ、女性の場合、肌の状態が気になって、ついついビタミンCが多い栄養補助食品を利用しがち!
気付かないうちに、必要以上のビタミンCを摂取していることもあります。
残念ながら、取りすぎた分は全て排泄されてしまって無駄に!
多く取ったからといって、より多くの効果が得られるわけでもありません。
過度に心配したり、効果を期待し過ぎて多量に取ることは避けましょう。
ビタミンCが多い食品
ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱い特徴があります。
このため、調理が不要な果物がおすすめ!
妊娠中はカロリーが気になって果物を避ける方がいますが、妊娠中も果物を200~300gとることが推奨されています。
(参考:妊産婦のための食事バランスガイド|厚生労働省、食事バランスガイド|農林水産省)
ビタミンCが多い果物を紹介しますので、朝食やおやつに食べる習慣をつけてみてはどうでしょう。
- アセロラ(酸味種)100gで1700mg
- 甘がき100gで 70mg
- キウイフルーツ100gで69mg
- いちご100gで 62mg
- グレープフルーツ100gで36mg
- うんしゅうみかん100gで32mg
- メロン100gで 25mg
(参考:食品成分データベース|文部科学省)
キウイフルーツやグレープフルーツのように一年中、スーパーで手に入るものもありますし、季節を感じられる果物もあります。
果物に含まれる糖分は体内ですぐにエネルギーに変換できる、消費しやすいもの。
果物の糖は体にも心にも優しいものなので、妊娠中の食を楽しくするためにも、ぜひ取ってくださいね。
ビタミンB群は心と体両方に不可欠!肉や魚、穀物をしっかり食べよう
ビタミンBは水溶性のビタミンで、B1、B6、B12など、種類もさまざま!
エネルギーを取り出すために糖を分解するのに使われたり、血液を作る時に欠かせなかったり、たんぱく質合成に重要な役割を持っていたり、神経の働きを助けたり。命を維持する時に必要不可欠な栄養素です。
不足した時の症状や問題
ビタミンB1が不足した時の症状で有名なのが「脚気」です。
神経の反射や脳の働きに悪影響がでます。また、糖の分解に支障が出て、エネルギー不足になったり疲れが取れなくなったりすることも。
ビタミンB6が不足すると、口内炎や皮膚炎、筋肉の痙攣、うつ病といった症状が出ます。
また、たんぱく質からエネルギーを生み出せなくなったり、筋肉や血液を作り出すことができなくなったりして、全身に不調が出ます。
ビタミンB12が不足すると、ヘモグロビンの働きが低下して酸素を全身に送り届けられなくなったり、脳からの指令を全身にうまく伝えられなくなったりします。
妊婦さんの場合、胎児を育てるためにたくさんのエネルギーや血液が必要です。
また、ホルモンバランスが産前とは全く違い状態になり、精神的にも不安定になりがち。
ビタミンBが不足することは、妊婦さんの心と体だけでなく、胎児の成長にも悪影響が!ビタミンB不足は妊婦さんの大敵です。
過剰摂取の症状
ビタミンBは水に溶けやすく、たくさん摂取しても尿と一緒に体外へ排泄されます。
体の中に溜まることがないので、通常の食生活をしている場合は過剰摂取を気にする必要はありません。
ただ、栄養ドリンクや栄養補助食品、薬を毎日複数利用している方は要注意!
一度に大量に摂取すると、イライラしたり、頭痛、不眠、痒みといった症状が出ることがありますよ。
妊婦さんの1日の摂取量(目安量)
ビタミンBは体に貯めておけません。
このため、毎日、こまめに摂取する必要があります。
厚生労働省は、B1、B6、B12、全てについて妊娠中は産前より多く取ることを推奨しています。
<ビタミンBの1日の摂取量>
- ビタミンB1:3mg/日
- ビタミンB6:4mg/日
- ビタミンB12:8μg/日
ビタミンBは水溶性で尿と一緒に排泄されるので過剰摂取を気にするひつようがないのですが、ビタミンB6だけは上限が45mg/日とされています。
栄養補助食品を利用する際は、ビタミンB6の量をチェックし、上限に注意してくださいね。
ビタミンB1、B6、B12が多い食品
ビタミンBは肉や魚介類、穀物に多く含まれています。
主食・主菜をしっかり食べることで補えますよ。
(参考:食品成分データベース|文部科学省)
妊娠中、キッチンに立つのが大変なこともありますよね。そんな時は魚介類の缶詰が便利。
また、玄米や豆腐も含有量は少ないですが毎日食べ続けることができる手軽な食材なのでおすすめです。
まとめ
ビタミンは体の中に蓄積される脂溶性のもの(A、D、E、K)と、多く取っても尿と一緒に排泄されていく水溶性のもの(B1、B6、B12、Cなど)があります。
脂溶性のものは、多く取りすぎると体調不良の症状や胎児に悪影響が出ます。
通常の食生活を送っていると過度に心配する必要ありませんが、レバーやうなぎを食べる時は量に注意してください。
水溶性のものは、過剰摂取の心配はまずありません。
ただし、栄養補助食品や薬を利用すると大量に摂取してしまう危険があります。
必ず栄養素の量をチェックするようにしてくださいね。
ビタミン類は、妊婦さんの体はもちろん、胎盤の維持や胎児の成長に不可欠なもの。
数多くの食品をバランスよく食べることで、不足しないよう心がけてくださいね。