妊娠が分かってすぐは、お腹も膨らんでいませんし、つわりさえ大丈夫であれば、普通に動けます。
でも、妊娠初期は赤ちゃんにとっても、お母さんにとっても大切な時期。赤ちゃんは、まだ人間らしい体ではないかもしれませんが、妊娠2カ月頃(4週~7週)からは内臓の基礎が形作られている最中ですし、お母さんは見た目は普通でもホルモンバランスが大きく変わってきている時期です。
この時期だからこそ、気をつけたいことは次のとおり。
・薬の服用には注意
・バランスの良い食事をすること
・カフェインの摂取を控える
・喫煙・飲酒を控える
・ハイヒール、自転車の靴はさける
・レントゲン撮影に注意
まだ妊婦さん自身は自分が変わったという自覚はないかもしれません。でも、ママになると、体も変化していきますし、ママの体の変化は赤ちゃんに大きな影響を与えているのです。詳しく見ていきましょう。
目次
妊娠初期の赤ちゃんの変化
1カ月頃(0~3週)
受精卵になって着床したばかりの赤ちゃん。この時期はまだ「胎児」ではなく「胎芽」と呼ばれ、大きさはまだ3mmほどの小さな命です。
2カ月頃(4週~7週)
7週目には1cmほどに成長しますが、まだ魚のようにエラや尻尾がある状態。7週末には2頭身になります。脳や脊髄、目や耳などの神経系の組織が形成される時期です。
3カ月頃(8~11週)
妊娠11週には、身長が4cm~6cmの大きさに。「胎芽」が「胎児」と呼ばれるようになる時期です。胴が伸びて二頭身になり、骨と筋肉が急成長。心臓、脳、肝臓などほとんどの内臓の基本的な形ができあがります。手足の指もできあがって見分けられます。
4カ月頃(12〜15週)
まぶたや足の爪など、体の細かい部分も完成形に近づいてきました。体はうっすらと体毛に覆われています。妊娠15週には、身長15cm、体重100gぐらいになっています。
⒈ 薬の摂取に気をつける
妊娠中全般において、薬の服用は医師の指導のもとに行いましょう。
ママが飲んだ薬は、胎盤を通して赤ちゃんに届いています。妊娠初期、特に2カ月頃には内臓や神経、手足などの重要な構造が作られている時期でもあり、薬の影響を受けやすくなっています。
中期以降は薬が目に見えて障害を引き起こすことは少なくなっていきますが、臓器の機能障害や発達障害を引き起こす恐れがあります。
元々、持病があって健康維持のために薬が欠かせない場合、赤ちゃんへの影響を考えて、妊娠中でも問題のない薬が処方されます。
妊娠中に飲んでもいいのは、こうした医師によって安全が確認された薬のみで、市販薬を勝手に服用するのはやめておきましょう。
湿布薬などにも注意
内服薬について注意する妊婦さんは多いのですが、湿布薬や軟膏など外用薬について心配する人はほとんどいません。
確かに飲み薬よりもリスクは低いですが、内服薬と同じ成分の湿布薬などがあります。ママの体内に吸収されて量や濃度は少なくとも、お腹の赤ちゃんにも届きます。
どの薬であっても医師に相談してから使うようにしてくださいね。
⒉ バランスの良い食事を心がけよう!
妊娠前に比べて、栄養バランスに気を使う妊婦さんは多いと思います。肉や魚などのタンパク質や緑黄色野菜、ご飯などの炭水化物をバランス良く食べるということはもちろんですが、妊娠中、特に妊娠初期に意識して取りたい栄養素があります。
それが、➀葉酸➁鉄分。逆に取りすぎてはいけない栄養素もあり、それがビタミンAです。
葉酸を取ろう!
葉酸とは、ビタミンB群の一種で赤ちゃんの細胞分裂を促し、貧血を予防する栄養素。緑黄色野菜や果物にたくさん含まれていますが、水溶性のビタミンなので毎日摂取する必要があるのです。
この葉酸が妊娠初期に特に必要なのには理由があります。先天性の神経系異常の原因の一つに葉酸不足が挙げられているからです。
必要な量は1日400〜500μg。通常の女性であれば、必要量が200μgなのでいつもの倍量を取らなければいけないということになります。
葉酸をたくさん含む食品は次の通り。
アスパラガス(3本) | 114μg | 枝豆(50g) | 160μg |
小松菜(100g) | 110μg | 納豆(50g) | 60μg |
いちご(75g) | 67μg | アボガド(100g) | 112μg |
大根の葉(80g) | 112μg | ブロッコリー(50g) | 105μg |
葉酸は水に溶けやすく、加熱すると失われやすい栄養素です。必要量を全て食品から摂るのは難しいため、サプリメントを勧める病院もあります。
鉄分
3カ月頃は、赤ちゃんの胎盤ができ始める時期。赤ちゃんは、胎盤やへその緒を通してママの血液から栄養を吸収して大きくなっていきます。
つわりがひどい時には、無理して食べなくても大丈夫ですが、食べられるようになったら鉄分を意識して食事を摂りましょう。
女性の鉄分摂取量は1日6.5mg。妊娠初期には2.5mg、中期および後期は15.0mgの鉄分が追加で必要となります。
鉄分が豊富な食品は次の通り。
あさり(25g) | 1.0mg | マグロ(100g) | 2.0mg |
小松菜(100g) | 2.8mg | ほうれん草(100g) | 2.0mg |
ひじき(乾燥5g) | 2.8mg | 納豆(50g) | 1.7mg |
鶏レバー(50g) | 4.5mg | 切り干し大根(乾燥20g) | 1.9mg |
鉄分は、動物性のヘム鉄と植物性の非ヘム鉄の2種類があります。植物性の非ヘム鉄は、動物性たんぱく質や緑黄色野菜と一緒に摂ると吸収が良くなります。
生ハムやレアステーキには注意!
十分に加熱されていない肉や生ハムに妊娠中には気をつけなければいけません。「トキソプラズマ」という寄生性の微生物に感染する危険性があるからです。豚、鶏、牛、羊、鯨のどの食肉からも感染する危険性はありますが、最もリスクが高いのが豚です。
ママが感染しても特に影響はありませんが、胎盤を通して赤ちゃんにうつると、流産したり、赤ちゃんの脳や神経に後遺症が残ると言われています。妊娠初期であるほど症状が重いため、特にこの時期は注意しておきたいですね。
この感染症は、食肉だけでなく、猫の糞からも感染します。野良猫の多い地域の公園の砂場や土には直接手で触れないようにしましょう。
妊婦検診の項目にトキソプラズマ感染が入っていることがあり、陽性と判断されれば、薬を服用して赤ちゃんへの感染を防ぎます。
また、陰性の場合には妊娠中の感染を防ぐために特に注意が必要となります。
ビタミンAは過剰摂取に注意!
ビタミンAには、人参や緑黄色野菜に含まれるβカロチンと動物性食品に含まれるレチノールがあります。このレチノールは、レバーやうなぎ、マグロなどに多く含まれていますが、妊娠初期に過剰摂取すると赤ちゃんの奇形のリスクが高まります。
普通に食事で摂取する分には、摂りすぎるということが少ない栄養素ですが、最近ではサプリメントを気軽に使うようになっているため、心配されているのです。
ビタミンAは脂溶性なので、尿に排出されず体内に蓄積されていきます。ビタミンAを含むサプリメントや総合ビタミン剤といった薬を摂取する時には注意が必要です。
⒊カフェインの摂取を控える
ママが口にしたものは、胎盤を通して赤ちゃんに届きます。
カフェインももちろん体内に届くわけですから、影響がゼロというわけではありません。でも、1日150mg以内のカフェインであれば、問題ないとされていますから、よほど過剰に摂取するわけでなければ、大丈夫です。
1日1〜2杯のコーヒーならば飲んでも大丈夫というわけです。ただ、カフェインはコーヒー以外にも含まれます。紅茶や緑茶でもカフェインを摂っているわけですから、1日に何度もコーヒーやお茶を飲むという方は注意が必要かもしれません。
種類 | 飲み物に含まれるカフェイン量(150mlあたり) |
インスタントコーヒー1杯 | 60mg |
ドリップコーヒー | 135mg |
紅茶 | 30mg |
抹茶 | 45mg |
玉露 | 150mg |
緑茶 | 30mg |
⒋ 飲酒・喫煙は控える
アルコール
妊娠中のアルコールはやめておきましょう。アルコールによる「胎児性アルコール症候群」といった先天性の発育障害を起こす危険性があります。
少量のビールぐらいなら大丈夫と言われることがありますが、アルコールは胎盤を通して赤ちゃんに届いています。特に赤ちゃんの脳や神経が形成されている妊娠初期は、我慢しましょう。
ニコチンの影響は多大!
タバコは厳禁!タバコに含まれるニコチンには血管を収縮する作用があります。ママの血管が収縮すれば、胎盤の血液量が減り、赤ちゃんに必要なだけの酸素や栄養が十分に行かなくなります。
その結果、赤ちゃんの形態異常、発育障害や呼吸器障害、低体重などを引き起こす可能性があります。流産や早産、死産などにもつながる恐れがあります。
常位胎盤早期剥離といったトラブルも起こりやすくなることがわかっています。
受動喫煙を防ぐためにパートナーや同居家族にも禁煙してもらいましょう。
⒌ ハイヒールや自転車には注意
お腹が大きくなってくると、バランスが崩れて不安定になりがち。ハイヒールのサンダルや靴は転倒の恐れがあるので注意が必要です。
同じ理由で自転車もあまり勧められません。道路を自転車で走る時の振動で流産するという危険性が高いというわけではありませんが、転倒した時のダメージは大きいです。
毎日の買い物や通勤に自転車を利用していた人は、徒歩で運動がてら歩くか、ラッシュ時を避けて公共交通機関を利用するといいですね。
⒍ レントゲンの撮影は大丈夫?
たった1回のレントゲンが影響することはありません。
放射線がDNAを傷つけ、染色体異常を起こすといったことを心配する妊婦さんは多いですが、50ミリシーベルト以下であれば、そのようなトラブルが起きる可能性は低く、1回1ミリシーベルト以下のレントゲンでは全く問題がないとされています。
ただ、妊娠中にわざわざレントゲンを撮る必要がないのであれば、避けておきたいものですね。レントゲンを撮る時には医師に相談して、受けるようにしましょう。
怪我などでどうしてもレントゲンを撮る必要がある場合は、お腹をプロテクターで覆って撮影すると安心ですね。
まとめ
妊娠初期は、つわりで苦しい人もいる中、母子手帳をもらったり、上司に妊娠を報告したり、里帰り出産する人は病院を決めたり…とやることはたくさんあります。
まだまだ妊婦になったという実感はわきにくい中でも、妊娠初期に注意しておかなければならないことがあります。
妊娠するまでタバコを吸っていたり、晩酌をしていた、という人には我慢の多い妊娠生活になるかもしれません。
でも、妊娠は赤ちゃんを迎えるまでの準備期間でもあります。バランスの良い食事、赤ちゃんが心地よく暮らせる環境を整えながら、ママ、パパになる気持ちの準備をしていきましょう。