妊娠中毒症という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
妊娠後に抱えるトラブルで重症化すると妊娠の継続が難しくなることも。
少し前までは、医師から体重管理を指導される時に必ずといっていいほど「妊娠中毒症にならないように」と言われていました。
しかし、実は今は妊娠中毒症とは言わないんです。
今は妊娠高血圧症候群と言い、定義も注意点も変わってきています。
そんなちょっと分かりにくい妊娠中毒症と妊娠高血圧症候群について、予防法や注意点4つをまとめました。
・妊娠中毒症は古い言い方
・今は妊娠高血圧症候群と言い、定義・リスク・原因が変わってきている
・妊娠高血圧症候群の予防法や注意点4選
場合によっては、母子の命が危険にさらされることもある妊娠中毒症・妊娠高血圧症候群について、詳細をみていきましょう。
目次
妊娠中毒症は古い言い方
妊娠中毒症という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、今、妊娠中毒症という言葉は使われていません。
以前は、妊婦さんが妊娠後に高血圧になったり蛋白尿や浮腫になると「胎盤から分泌される物質が原因」と考えられていました。
妊娠20週目~産後6週目に高血圧・蛋白尿・浮腫のうち1~2個の症状が出ると「妊娠中毒症」と診断。
水分やタンパク質の摂取量、塩分、脂肪・糖類の摂取をコントロールする食事療法が有効と言われ、厳しく指導・管理されていました。
しかし、今はこの考え方は否定されていて、妊娠中毒症という診断はされなくなりました。
今は妊娠高血圧症候群
1998年からは、妊娠高血圧症候群と名称が変わり、定義も治療・指導方針も変更。
今は「高血圧」がキーポイントとなっていて、原因も妊娠後の食事ではなく遺伝や妊娠時の状態が重視されています。
定義
妊娠20週以降産後12週までに高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。
さらに、高血圧のみの場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類されます。(引用元:妊娠高血圧症候群|日本産科婦人科学会)
重視されているのは血圧。
収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上になると高血圧が発症したと診断されます。
妊娠中毒症では「むくみ」が症状に入っていましたが、むくみは女性ホルモンが影響することが分かっていて、新しい定義では大きな問題にはされていません。
妊娠高血圧症候群は、多くの場合、妊娠32週以降に発症。
20人に1人がなると言われていて、決して珍しいものではないんですよ。
リスク
妊娠高血圧症候群になると、次のような危険があります。
特に、早い時期(妊娠32週未満)に高血圧症候群になった場合は重症化しやすいので特別な注意が必要です。
・高血圧
・尿蛋白
・尿蛋白と痙攣発作(子癇)
・脳出血
・肝臓や腎臓の機能障害
・HELLP症候群(肝機能障害・溶血・血小板の減少)
・胎児の発育不全
・胎盤剥離
・胎児死亡
血圧が高いということは、血管にそれだけ負担がかかるということ。
妊婦さんの場合、子宮にも胎盤にも非常に多くの血管が走っており、栄養分や酸素を胎児に送り続けています。
血液の流れは命を繋ぐもので、血管に異常が生じると母子共に命が危険にさらされることも!
高血圧はただ血圧が高いだけでなく、命を奪うことに繋がりかねないことなのです。
(参考:妊娠高血圧症候群|日本産科婦人科学会)
なりやすい妊婦さん
妊娠高血圧症候群の原因は不明な点も多いのですが、次のようなことが指摘されています。
・遺伝(高血圧の家族が血縁者にいる)
・高齢の妊婦(40歳以上)
・若齢の妊婦
・肥満の妊婦
・双子、三つ子など多胎児妊娠している妊婦
・糖尿病の持病がある妊婦
・以前、妊娠高血圧症候群になったことがある経産婦
このような妊婦さんの場合、胎盤がうまく作られないことがあります。
そうすると酸素や栄養素の交換がスムーズにできず、母体は血圧を上げて酸素などを胎児に送ろうとするので血圧が高くなります。
さらに、正常に形成されていない胎盤で、いろいろな物質が余計に作られたりする可能性があり、このせいで蛋白尿が出たり、異常が起こると考えられています。
妊娠高血圧症候群の4つの対策
妊娠高血圧症候群の予防策や対応策は、次の4つがポイントです。
【1】妊娠前から生活を改善
妊娠高血圧症にならないためには、血圧を抑えるのが第一!
妊娠前から生活内容を改善し、高血圧にならないように心がけてください。
・塩分を1日6g以下に抑える食生活
・ストレスを溜めない生活(自律神経の働きを整える)
・肥満を予防(特に内臓脂肪は血圧を上げることが分かっている)
・飲酒や喫煙を控える
妊活の段階でこうした生活を見直し、妊娠後も改善した生活を続けるようにしてくださいね。
(参考:食事療法のすすめ方 高血圧の食事|東京都病院経営本部)
【2】高齢出産を極力避ける
女性の社会進出や、キャリアアップ、生活の基盤固めなど、色々な理由で晩婚化が進み、初産年齢も高くなっています。
女性の活躍は喜ばしいことですが、人の体は年齢を重ねる毎に変化に対する適応能力や許容力が落ちるもの。
高齢で妊娠した場合、血管に対する負荷、胎児に対する酸素や栄養の供給力、代謝力などが不足して妊娠初期からトラブルに見舞われることが!
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクも高くなるので注意が必要です。
妊娠・出産は計画通りにいくものではありませんが、体の機能は年齢と共に衰えていくもの。
早い段階で人生設計について考え、回避できるリスクは避けるようにしたいですね。
【3】妊娠高血圧症候群になったら安静に!
妊娠高血圧症候群になったら、とにかく安静が一番です。
妊娠高血圧症候群の場合、安静にしていても血圧は高い状態。
動くと更に血圧が上がって血管に大きな負担がかかります。
塩分を減らしてバランスの摂れた食事を取る食事療法や、薬を利用して血圧を下げる治療を行いながら、できる限り安静にしましょう。
場合によっては出産まで入院するケースもあります。
【4】出産&産後はサポート態勢が整った病院で過ごす
妊娠高血圧症候群の症状は妊娠中だけでなく、出産中や産後の母体にも影響します。
胎盤が剥がれたり、痙攣や脳出血のリスクもあるので、高度な医療設備が整った病院で出産することも。
産後も無理は禁物で、高血圧の症状が治まるまで経過観察することもありますよ。
どうしてもリスクが高い出産になってしまうので、入院が長引く可能性を考え、診断された段階で家族との打ち合わせをしっかりする必要があります。
特に、上の子がいる場合はママが入院中の生活・ケアについても十分、話し合っておいてくださいね。
妊娠中毒症は妊娠高血圧症候群に。高血圧が重要ポイント!
妊娠中毒症と言われていた症状は、今は妊娠高血圧症候群といわれ、定義も変わっています。
重要なのは高血圧。
そして、原因も遺伝や妊娠時の年齢、肥満、糖尿病などの持病が関係しています。
妊娠高血圧症候群の予防には、妊娠前から生活を改善したり、高齢出産を避ける必要があります。
さらに、妊娠高血圧症候群になったら安静が第一で、医師の指導による食事療法や薬での治療が重要に。
出産時や産後の経過もリスクが高いので、命を守るためのケアを重視したバースプランを立ててくださいね。