目次
「拓」という漢字について
字画数:八画
音読み:たく
訓読み:――
「拓」の意味や由来や成り立ちと特徴
「拓」は、「両手」「石」「広い場所」の、3つの絵から生まれた漢字です。
両手で手つかずの広い場所にある石を拾い集めて土から異物をなくしてゆく様子を表していることから「土地に手を加えて人が暮らせる場所にする」という意味になりました。
絵では石となっていますが、異物を取り除くということは乱雑に立っている木や多い茂る雑草なども指します。
つまり田や畑にするために土地を拓く、開拓するということですね。
本来であれば土地を拓くための道具の絵が描かれていてもよいものですが、手しか描かれていません。まだ道具という道具がそれほどなかった時代なのでしょう。
生きるために、老若男女問わずに朝から晩まで手作業でひたすら異物を取り除いていた様子を想像すると、今の私達の住むこの国は先人達の苦労があってのものだと感謝せざるをえませんね。
またこの漢字からは、何かに薄い紙を押し付けて上から軽く叩き墨で形を写し取るという意味も生まれました。
「魚拓」などがそれにあたります。
こちらは「拓く」という意味からは遠く、なぜこの漢字が用いられたのかは現在でもはっきりしていません。
何かの漢字の代わりに用いられたと考えるのが妥当かもしれません。
後者はさておいても、「拓」の本質の意味は「土地に手を加えて人が暮らせる場所にする」ということです。
人がとても住めない土地を切り拓いて住めるようにするわけですから、とても大きな意志の強さを感じさせますね。
土地を拓く、開拓する、という言葉から思い出すのはシベリア抑留者の話でしょうか。
第二次大戦の終戦間近に不可侵条約を反故にして中国内部の満州国に攻め込んできたソ連兵達は、そこに駐留していた日本兵や民間人達を強制的にシベリアに連行し、労働力として奴隷の如く使いました。
マイナス50度にもなると言われる極寒の中で、ろくな防寒着もなく毎日労働させられる日本人達。食べ物も1日1回の具のないスープのみ。
寒さと飢えに苦しみながらもまさしく手作業で鉄道や建造物を作るためにシベリアの大地を開拓させられていたのです。
その期間は、実に12年にも及びました。
その間に寒さと飢えで亡くなった人達の数は計り知れません。とても過酷な状況でした。
しかし、日本人はとても真面目に働きました。
これは日本人の持つ特性なのかもしれません。
石を掘り返す時でも、近くの人と競い合い、「勝った、負けた」と、ささやかに楽しみました。
その様子に監視のソ連兵達も首を傾げていました。後年、元ソ連兵は当時を思い出し、日本人はどんな状況でも手を抜かずに楽しんでいたと述懐しています。
そして、普通では20年かかると言われていた開拓が半分の10年余で終わらせたのは日本人だからできたことだとして敬意を表したいと目頭を押さえていました。
「拓」を使った熟語
開拓
意味:未開の地を切り拓いて、田畑や道路などを作り人が居住できるようにすること。
干拓
意味:遠浅の海や水深の浅い湖の岸を区切って陸地を人工的に作ること。
拓墨
意味:木や石などに刻まれた文字や模様を紙に写し取ること。
拓本ともいう。
拓殖
意味:未開の地を開拓して、そこに住みつくこと。
湿拓
意味:湿らせた紙を対象物に貼り、墨をつけて文字や模様を写し取る方法。
手拓
意味:拓本をとること。
開拓者
意味:土地の開拓に携わる人。
また、誰もやったことのない領域を切り開くこと。
未開拓
意味:山野がまだ開拓されていないこと。
拓落失路
意味:地位を得られないまま退けられて出世の道を失うこと。
「拓」の説明の仕方
電話や役所の受付などで名前を伝える際、どういう漢字を書くのか聞かれる時があります。
その場合、どのように説明すればよいのか悩みますよね。
ここではその例を紹介したいと思います。
例えば、あなたの名前が拓美(ひろみ)だとします。
・「ひろみのひろは、魚拓の拓です」
これは簡単ですね。
「拓」はいろんな言葉に使われています。
自分が説明しやすいように例をいくつか考えておくとよいですね。
「拓」を使った名前の有名人・芸能人
川谷 拓三さん(昭和期の俳優)
木村 拓哉さん(俳優、歌手、声優、タレント)
厚木 拓郎さん(俳優、声優)
小松 拓也さん(俳優、歌手)
高島 拓也さん(俳優、コラムニスト)
草川 拓弥さん(俳優、モデル、ダンサー)
坪川 拓史さん(映画監督、俳優、アコーディオン奏者)
宗像 拓郎さん(俳優、殺陣師)
中村 拓武さん(映画監督、俳優)
根岸 拓哉さん(俳優、タレント)
「拓」を使った名付け候補
拓香未(たかみ)
拓玖実(つくみ)
未拓(みひろ)
拓瑠(つげる)
拓夢(ひろむ)
拓美(ひろみ)
優拓子(ゆいこ)
拓奈李(ひなり)
拓芽胡(ひめこ)
千拓(ちひろ)
拓夏(ひろか)
由拓(ゆい)
拓莉(ひらり)
真拓(まひろ)
拓津希(たつき)
瑠拓子(るいこ)
陽拓羅(ひいら)
拓波(ひな)
遊拓(ゆい)
麻拓(まい)
拓実華(ひみか)
明拓子(めいこ)
梨拓紗(りいさ)
拓絵子(たえこ)
拓苗(ひろえ)
まとめ
「拓」の意味は、未開の地を切り拓くことです。
困難に負けない強さを表しています。
そのため、どの漢字と組み合わせても字が霞むことはなく、インパクトの強い名前になります。
また、「拓」には誰も踏み込んだことのない分野を切り拓いてゆくという意味も併せ持っています。
ある分野の先駆者になる可能性を秘めた漢字でもあるのです。
臆することなく突き進んでゆくフロンティア精神に富んだ女性になるように。