妊娠中期と呼ばれる妊娠5ヶ月~妊娠7ヶ月頃になると、体重増加で医師から体重制限するように指示される妊婦さんは多くみられます。
一方で、妊娠中期になっても吐き気などの症状がみられて食欲減退し、体重が減少してしまうという妊婦さんも。
このように、妊娠中期の体重の増加や減少をひき起こす原因は一体何なのでしょうか?
今回は、その原因を解説するとともに、妊娠中期に体重管理する際の対処法を6つピックアップしました。
- 毎日体重をチェックする
- 食べ過ぎ防止におすすめ!食事の15分前の温野菜
- 糖分や脂肪分の多い食べ物は避けよう
- 早食いは体重増加の原因に!過食の抑制にはよく噛んでゆっくり食べよう
- ウォーキングやヨガなど軽い運動もおすすめ
- 体重減少対策は少しずつ食べよう
妊娠中期に太り過ぎてしまうと、妊婦さんや赤ちゃんに重篤なリスクを及ぼす可能性があります。
また、体重減少によって鉄分が欠乏した場合には貧血を発症することも。
そのため、ぜひこちらの記事を参考にして、妊娠中には体重管理をきちんと行うようにしてくださいね。
目次
妊娠中期の体重コントロールの目安とは?体重増加のペースはどうすればいい?
妊娠中期の妊婦さんの体重の目安ってご存じですか?
体重をコントロールするためには、どのぐらい体重が増えてもいいのか、またそのペースについて知っておきたいものですよね。
そこで、まずは妊娠中期の推奨体重増加量などについて解説します。
妊娠中期の体重増加量について
厚生労働省は、妊娠前の体重や身長から算出したBMIの数値を基準に、妊娠期間中の推奨体重増加量を次のように示しています。
体重オーバーを防ぐ目安になりますよ。
・BMI18.5未満:9~12kg
・BMI18.5~25.0未満:7~12kg
・BMI25.0以上:5kg(ただし大幅に超えるケースでは個別の対応)
また、妊娠中期から出産するまでの1週間あたりの推奨体重増加量については次のように示されています。
・BMI25.0未満:0.3~0.5kg
・BMI25.0以上:個別の対応
(出典元:厚生労働省)
妊娠するとどれだけ体重増加していいのか、また体重増加のペースについては、上記を参考にしてくださいね。
妊娠中期に体重が増えすぎた!その原因は?赤ちゃんへの影響はある?
妊娠中期に体重が増えすぎたという妊婦さんは少なくありません。
その結果、妊婦健診の際に体重制限を指示されたという方も。
妊娠中期になぜ体重が増加するのでしょうか?
また、体重増加による赤ちゃんへの影響についても解説します。
食欲回復による食べ過ぎ
妊娠4ヶ月くらいまでを呼ぶ妊娠初期につわりで悩まされた妊婦さんのほとんどは、妊娠中期に入る頃にはその症状が収まります。
吐き気や気持ち悪さから解放され食欲が回復するので、ついつい食べ過ぎてしまう妊婦さんも多いようです。
普段は何とも思わないでしょうが、”食べられない”という苦痛を味わった後では、食べものを食べられるという喜びは計り知れないものでしょう。
一方妊娠中期のあたりから、お腹の赤ちゃんを守るために皮下脂肪がつきやすく、出産などに備えて脂肪が蓄積されやすい身体になっています。
そのため、食べれば食べるほど太りすぎてしまうこともあるんです。
空腹になると気持ち悪くなる「食べづわり」が原因
先程述べたように、妊娠中期に入るまでにほとんどの妊婦さんはつわりが収まります。
しかし、妊娠中期に入っても、お腹が空くと吐き気に見舞われる「食べづわり」の症状が続くケースも。
こうした妊婦さんは小分けにして食べるため、食べすぎて体重の増加を招きやすい傾向にあります。
便秘による腸内フローラのバランスの乱れ
(画像出典元:くにちか内科クリニック)
腸内の壁には細菌がびっしりとひしめき合って棲息しています。その状態は、まるでお花畑のようなので腸内フローラと呼ばれています。
腸内フローラは、身体にとって有益な働きをする善玉菌、有害な働きをする悪玉菌、またいずれかの菌の働きに影響される日和見菌の3つに大別されます。
これらの良好なバランスは、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」といわれています。
しかし腸内フローラのバランスが取れていると、善玉菌が食物繊維をエサにして短鎖脂肪酸が活発に生成。
短鎖脂肪酸は、脂肪の燃焼や余分な脂肪の蓄積を妨げる他、食欲抑制作用のあるホルモンの分泌を促進するなど、肥満を防止するさまざまな効果があります。
ところが、妊娠中期になると女性ホルモンのプロゲステロンの作用や拡張した子宮の圧迫によって腸の働きが低下するため、妊婦さんの多くが便秘を発症。
便秘になると、悪玉菌が増え、腸内フローラのバランスが崩れます。そのため、短鎖脂肪酸の生成が阻害され、太りやすくなってしまうんです。
妊娠中期の体重増加による赤ちゃんへの影響は?
妊娠中期に体重が増えすぎると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になりやすくなります。
妊娠高血圧症候群とは、
妊娠20週以降産後12週までに高血圧を発症するもので、妊婦さん約20人に1人の割合で起こります。
(出典元:日本産科婦人科学会)
妊娠中期になると重症化しやすいというのが特徴です。
重症化すると、妊娠高血圧腎症や痙攣発作を起こす子癇、脳出血、さらには溶血性貧血と肝機能障害と血小板の減少を併発するHELLP症候群などを発症し、妊婦さんにとって重大なリスクをもたらす可能性も。
また、赤ちゃんに栄養や酸素が届きにくくなってしまうと、深刻なケースでは赤ちゃんが死亡してしまうこともあるんです。
関連記事⇒妊娠高血圧症候群とは?原因や症状と治療方法、4つの予防策
妊娠糖尿病とは、妊娠してから初めて糖代謝の異常が見つかり、糖尿病に至っていないものをいいます。
高血糖の状態で妊娠すると、赤ちゃんが巨大児になるリスクが高いといわれています。
そして、高血糖のまま妊娠を継続すると、妊婦さんには、妊娠高血圧症候群の併発や羊水過多による流早産などのリスクが生じる可能性も。
関連記事⇒妊娠糖尿病とは?胎児への影響と妊娠中に気をつける7つの予防策と解決策
このように、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になると、妊婦さんだけでなく赤ちゃんの命にも危険が及ぶ恐れがありますから、体重管理には充分気をつけましょう。
妊娠中期の体重減少の原因はつわりや下痢?ストレスで体重が減ることも?
妊娠するとほとんどの妊婦さんは体重が増加しますが、中には体重が減少する方も。
ちゃんと食べてるのに、なぜ体重が減ってしまうのでしょうか?
体重が減ってしまうと、お腹の赤ちゃんの成長が心配になりますよね。
そこで、妊娠中期に体重が減少する原因について解説します。
吐き気や胃痛などによる食欲不振
妊娠中期になると、子宮が拡大することによって胃が圧迫されます。
これによって胃の消化不良や逆流性食道炎が起こりやすくなり、吐き気や胃痛などから食欲不振になる妊婦さんも少なくありません。
つわりとよく似た症状なので、つわりの再発かと心配する方も。
しかし、つわりは妊娠初期に多量に分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という女性ホルモンが原因と言われていることから、異なるものです。
ホルモンバランスの乱れやストレスなどによる下痢が原因のことも
妊娠中期に入ると、女性ホルモンのhCGの分泌が減少する一方で、エストロゲンやプロゲステロンの分泌が盛んになります。
女性ホルモンは脳の視床下部の指令によってコントロールされていますが、女性ホルモンの分泌バランスが崩れることで、同じく視床下部を司令塔とする自律神経のバランスにも影響します。
自律神経が異常に働くことによって、腸の蠕動運動が促進されて下痢になったり、下痢と便秘を繰り返し発症。
下痢が続くと、体重が減少してしまうこともあるんです。
また、自律神経の乱れは、ストレスや冷えが引き金となってひき起こされることも少なくありません。
妊娠中期の体重減少で赤ちゃんへの影響ってあるの?
妊娠前のBMIが18.5未満とやせ型の妊婦さんで、妊娠後の体重の増加が7kg未満であれば、切迫早産や早産、低出生体重児分娩のリスクが高いといわれています。
妊娠前にやせていても、妊娠してからきちんと栄養を摂取し、適正に体重が増えていればリスクは軽減するので安心してくださいね。
BMI18.5~25.0未満と妊娠前に普通の体格の妊婦さんが妊娠中期になって体重が多少減少したとしても、赤ちゃんは妊婦さんの身体に蓄積されている栄養を取って成長するので心配ないでしょう。
ただし、著しい体重の減少は鉄分不足から貧血をひき起こすこともあります。
また何らかの病気が原因で妊婦さんの体重が減少し、赤ちゃんが適正に成長できていないケースも考えられます。
したがって、妊娠中期になって体重が減少した場合には、早めに医師に相談してくださいね。
おすすめの運動や食事方法も!妊娠中期の体重管理6つの対処法
妊娠中期に体重が増えたり減ったりすると、医師から体重管理をするように指示されることがあります。
このような場合におすすめの対処法を6つご紹介します。
毎日体重をチェックする
先述したとおり、妊娠中期以降、BMIが25.0未満の妊婦さんであれば1週間あたりの体重増加は0.3~0.5kgとされています。
そのため、毎日体重をチェックことによって、体重をコントロールするようになるため、体重の増えすぎや減少を避けることができますよ。
妊娠中の体重を管理できるスマートフォンのアプリを活用するのもおすすめ。
グラフでわかりやすく表示できるものや、産後の育児の記録としても使えるタイプのものもあるので、こうしたものを活用して体重管理を行ってみてくださいね。
食べ過ぎ防止におすすめ!食事の15分前の温野菜
食前に何かお腹に入れておくと、食べ過ぎによる体重増加を防げますよ。
特におすすめは、温野菜。
カロリーが低く、食物繊維が豊富なので血糖値の上昇を抑え、便秘の解消にも効果的です。
食べてから満腹を感じるまでに15分程度かかるといわれているので、食事の15分ぐらい前に取ると、主食の食べ過ぎを抑制できます。
この方法は、産後のダイエットにも使えますから、ぜひ実践してみてくださいね。
糖分や脂肪分の多い食べ物は避けよう
妊娠中には女性ホルモンが多く分泌されますが、女性ホルモンはインスリンの血糖値を下げる働きを妨げるため、妊娠中は血糖値が上がりやすくなります。
私自身、妊娠中期にバウムクーヘンをたくさん食べたら血糖値が高くなり、医師に甘い物の制限を指示された経験があります。
市販のジュースも糖分が多く含まれているので注意が必要。
糖分や脂肪分の多い食べ物は体重増加はもちろんですが、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の原因になりますので、妊娠中にはなるべく避けるようにしましょう。
早食いは体重増加の原因に!過食の抑制にはよく噛んでゆっくり食べよう
先述のとおり、脳が満腹を感じるまでには食べてから15分ぐらいかかります。
そのため、早食いであまり噛まずに飲み込んでしまうと、満腹を感じた時には食べ過ぎでお腹がパンパンということも少なくないようです。
こうした食べ過ぎを防ぐためには、しっかり咀嚼してゆっくり食べること。
ガツガツと食べるのではなく、おしゃべりしながら少しずつ味わって食べると、食べ過ぎを抑えられますよ。
ウォーキングやヨガなど軽い運動もおすすめ
医師から運動の制限や安静の指示を受けていない妊婦さんでしたら、体重増加対策として軽い運動がおすすめです。
妊娠中期になると胎盤が完成しているので、自宅周辺のウォーキングやマタニティヨガ、マタニティピラティスなど激しく動かない運動であれば問題ありません。
最近ではマタニティスイミングなるものも提供されていますので、一度試してみてはいかがでしょうか?
ストレス軽減や出産に備えて体力をつけるためにも、お腹の赤ちゃんに支障をきたさない程度に身体を動かしてみましょう。
体重減少対策は少しずつ食べよう
逆流性食道炎などによってなかなか食べられないのであれば、少しずつ分けて食べてみましょう。
少しの量であってもちょこちょこと分けて食べると、案外たくさん食べていたりするものです。
朝・昼・晩の3回に食べようとすると、食間の時間が長いので空腹から吐き気をもよおすことも。
また、食欲不振のため3回の食事にあまりたくさん食べられないと気に病むことで、ストレスの原因になることもあります。
妊娠中のストレスは切迫早産や早産の原因になるといわれているので、極力ストレスにならないよう、無理なく負担のない量だけ食べるようにしてくださいね。
まとめ
妊婦さんの体重が増えすぎてしまうと妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を発症しやすくなります。
そのため、妊娠中期に入ったら妊婦さん自身が毎日体重を計り、体重管理するように心がけましょう。
しかし、お腹に赤ちゃんがいる状態での無理なダイエットは絶対にタブーです。
急激に体重減少すると、鉄分の不足から貧血になることもあります。
体重制限する際には必ず医師の指示に基づいて行うようにしてくださいね。